見もの・読みもの日記

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漢籍の読みかた/古代中世 日本人の読書(丸善ギャラリー)

2020-10-13 20:50:50 | 行ったもの(美術館・見仏)

〇丸善・丸の内本店4階ギャラリー 第32回慶應義塾図書館貴重書展示会『古代中世 日本人の読書』(2020年10月7日~10月13日)

 たぶん毎秋行われている慶応大学図書館の貴重書展示会。和漢書が出るときはなるべく行くようにしている。今年は、古代・中世の日本人が「漢籍」をどのように学習し、また、どのように活用したのかをテーマとする。特に注目されたのは、直前の「プレスリリース」によって「『論語』の伝世最古の写本(出土資料を除く)と考えられる、隋以前の中国写本『論語疏』」の公開が告知されたことだ。

 本資料は、江戸時代には壬生家に収蔵されていた記録があるが、幕末以降所在不明になった。近年発見されて、同大学図書館が所蔵することとなり、2018年度より研究を進めているのだそうだ。会場では、入ってすぐの一番目立つ展示ケースに展示されていた。プレスリリースを見たとき、これは!みんな見に行くよな!と思っていたが、そんなに注目している人は多くなかった。

 この展示会も全面的に撮影OKと聞いてびっくりした。実は、土曜に見に行ったのだが、スマホを忘れていて撮影できなかったので、今日、会期最終日に仕事を早退して、駆け込みでもう一度見てきた。『論語』の伝世最古写本もこのとおり撮影可能。

 もともと慶応大学図書館は、質の高い論語コレクションを所蔵している。これは天文2年(1364)、堺の阿佐井野家による出版(阿佐井野本)。正平版論語に次ぐ天文版論語の初印本である。

 古書は蔵書印を見るのも楽しみのひとつ。兵書『黄石公三略』に弘前医官渋江氏(渋江抽斎)の蔵書印を発見。蔵書家だなあ。

 この『孝経直解』には「宝玲文庫」という知らない蔵書印が押してあって、気になったのであとで調べてみたら、イギリス出身の言語学者フランク・ホーレー(1906-1961)の旧蔵書らしい。外国人としては最高最大の古典籍蒐集家とも言われている人物である。

 漢籍の貴重書というと版本中心になることが多いが、「日本人の読書」というテーマのせいか、本展は写本が多かった。本文を書き写したり、書入れをしたり、あるいは抄本をつくることが即ち読むこと、学ぶことだったのだと感じた。 

 展示会鑑賞後は、丸善店内のカフェでお茶。たまにはこういう平日の午後があってもよい。

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