見もの・読みもの日記

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日本産ファンタジーの可能性/NHKドラマ『精霊の守り人』

2018-02-03 23:47:26 | 見たもの(Webサイト・TV)
〇NHK大河ファンタジー『精霊の守り人

 2016年から3シーズンに渡って放送されたドラマ『精霊の守り人』が完結した。シーズン1は全4回(2016年3-4月)、シーズン2『悲しき破壊神』は全9回(2017年1-3月)、シーズン3『最終章』は全9回(2017年11月-2018年1月)という構成だった。原作は上橋菜穂子氏による異世界ファンタジーである。1996年に第1作が刊行されて以来、多くの読者を獲得していることは知っているが、私は原作を読んでいない。また、2007年にNHK-BSで放映されたアニメ作品は、地上波再放送をたまたま見て、強く物語世界に引き込まれたが、最初の数話を見ただけで、物語の行く末を見届けることなく終わってしまった。

 それが再び『守り人』の世界に出会う機会がめぐってきた。主人公・女用心棒の「短槍使いのバルサ」を、かわいいお嬢さんイメージが強い(と思っていた)綾瀬はるかが演じることは納得いかなかったが、脚本が大森寿美男さんと聞いて、見てみることにした。シーズン1の第1、2回くらいまでは、アニメで記憶にある展開だったが、それ以降は全く初めて体験する物語世界だった。

 シーズン1は、まあまあだった。配役は綾瀬はるかを含めて悪くなかった。バルサの回想に登場するジグロ(吉川晃司)の寡黙で武人らしい雰囲気が、この物語にリアリティを与えていた。バルサの少女時代を演じた清原果耶は、わずかな登場シーンなのに印象的だった。新ヨゴ国の宮廷の人々は、聖導師(平幹二朗)も星読博士のガカイ(吹越満)も、くせ者感がじわじわにじみ出ていてさすがだった。幼いチャグム王子(小林颯)は、たった四話のうちに大きく成長していく様子を自然に演じていた。美術も衣装も特殊効果も、とにかく本気で「大河ファンタジー」という新しいジャンルを創り出そうとしていることはよく分かった。

 しかし正直なところ、シーズン1では、まだ視聴者の側がついていけてなかった。日本人ばかりが日本語で、変な衣装を着て変な作法を守って大真面目に「異世界」を演じていることに、何かくすぐったい違和感があった。あと、予想されたこととは言え、原作ファンやアニメファンの評価も厳しかった。そんな中で嬉しかったのは、原作者の上橋菜穂子さんが「ドラマと小説は『見せ方』が違います。『出来ること』も、違います。原作を忠実になぞっただけでは、ドラマには命が宿りません」と、ドラマを擁護する発言を公にしてくださったことである。裏を返せば、原作者の納得を引き出すまで話し合いと熟慮を重ねた制作者側に、十分な熱意と志があったということだろう。

 シーズン2は、物語の舞台が広がり、文化も自然環境も異なる、さまざまな国と人々が登場する。ロケなのかセットなのか合成なのか分からないけど、青い海あり、深い森あり、草原ありで、視覚的に楽しかった。そこに暮らす人々も、衣装や食事、宗教など、それぞれの生活のディティールが想像できるような作り込みがされていて、異世界ファンタジーの醍醐味を感じた。私は、あえて言えばシーズン2がいちばん好きだった。登場人物は一気に増えた。少年時代のチャグム王子を演じた小林颯くんが退場したのは残念だったが、引き継いだ板垣瑞生くんもとてもよかった。彼はシーズン3で、さらにぐんと大人びた存在になる。

 シーズン3で物語は収束へ向かう。前半でバルサと養父ジグロの物語が決着する。カンバル王のログサム(中村獅童)はただの悪人ではなく、面白い役どころだった。視覚化された「槍舞い」も美しかった。この頃になると、バルサを演じる綾瀬はるかさんの目つきと所作が惚れ惚れするほど板について、もはやバルサがそこにいるとしか思えなかったし、シーズン1で感じた日本人がつくる異世界ファンタジーの違和感など、どこかに吹き飛んでいた。後半はチャグムと父帝の和解の物語。全てが収まるところに収まり、バルサは幼馴染みのタンダ(東出昌大)のもとに帰って、静かに短槍を置く。原作は知らないのだけど、長い冒険を終えた主人公が、家族という幸せのもとに戻ってくるのは、わりと脚本の大森さんの好みのような気がする。

 実は原作の順序を入れ替えたり、改変した点があるそうなのだが、SNSに流れる感想を見ていると「原作の魂を尊重したドラマだった」ことを評価する声が多かった。原作シリーズのうち、ドラマに盛り込まれなかった作品について「〇〇も作って!」という要望もいくつか見た。多くのファンを持つ小説のドラマ化、異世界ファンタジーという新ジャンルに果敢に取り組んだ制作チームを心から称えたい。視聴率は振るわなかったようだが、いつまでも愛され、これからも新しいファンを生んでいくドラマになると確信する。そして「大河ファンタジー」というジャンルが今後も続いていくといいな、と思う。その一方、本作は海外への売り込みも考えているようだが、シーズン3で絶賛された戦闘シーンは、確かに日本のTVドラマとしては例外的な迫力、規模感で描かれていたけれど、中国の最近のドラマを見ていると、全然かなわない感じがする。日本のドラマもがんばれ。
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門前仲町グルメ散歩:新しいパン屋さん

2018-02-03 12:15:26 | 食べたもの(銘菓・名産)
門前仲町に、昨年12月にオープンした新しいパン屋さん「トリュフベーカリー(truffle bakery)」でお買いもの。平日の夜、仕事帰りに何度か前を通っていたのだが、ガラス戸越しに見える店内はいつもきれいに片付いていて、最近まで何のお店かも分からなかった。このたび、ようやく入店。

デニッシュが300~500円とか、価格帯はかなり高い。まわりに庶民的なお店が多いので、ちょっと異質。でも確かに美味しかったので、お値段分の価値はある印象(私が買ったのは比較的安い価格帯のパン)。まあ使い分けですね。


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