○静嘉堂文庫美術館 『茶の湯の美、煎茶の美』(2016年1月23日~3月21日)
リニューアルオープン展の第2弾。文化財散歩みたいな中高年の団体客でにぎわっていた。静嘉堂の茶道具といえば、国宝『曜変天目』に重文『油滴天目』。これらはしっかり出ていた。前回、リニューアルオープン展の第1弾でも、サービス(?)でラウンジに展示されていたので、もしや第2弾の展覧会には出ないのではないかと心配したが、そんなことはなかった。曜変天目は、真横から見たショットも色が美しくて好きだ。
唐物茄子茶入の「付藻茄子」と「松本茄子」は、今回あまり詳しい説明がついていなかったが、大坂夏の陣の焼け跡から発見され、奇跡の修復を施されたんだったなあ、と記憶をよびおこしながら鑑賞する。虚堂智愚の墨蹟『就明書懐偈』の軸と飛青磁の小ぶりな花生のとりあわせもよかった。ほかに茶碗は、黒楽、赤楽、御所丸、織部、井戸と、ひととおり揃っている。ここまでが「茶の湯の美」で、だいたい見たことのあるものが多かった。
後半は「煎茶の美」。静嘉堂のホームページは「煎茶器の多数公開は15年ぶり(!) となります」と、自ら「!」マークをつけて紹介している。確かに、見たことのない、めずらしいものが多かった。まず、たくさんの茶銚(ちゃちょう)。急須のことだ。「紫泥」「梨皮泥」「朱泥」「松花泥」など材料の土によって、色と風合いが少しずつ異なる。てのひらに収まるほどのサイズで、丸くて、まっすぐで短い注ぎ口(鉄砲口)がついているのが標準形。磁器の急須とちがって、見た目や大きさにバラエティがないから、ひとつ持っていればよさそうなものだが、名品をコレクションするのが、愛好家の楽しみだったようだ。華やかな更紗を使った仕覆(外袋)が付随していたり、かたちの異なる茶銚八点を一括収納するケースも展示されていた。
湯罐(とうかん)は、見た目は茶銚に似ているが、炉にかけて、お湯を沸かすための道具らしい。茶銚よりも少し大ぶりで、河豚のようにふくらんでいる。どこでも気軽に湯を沸かせそうな、細長い炉と湯罐のセット、いいなあ。煎茶茶碗は小さくて焼きが薄くて、きりっとしている。複数がセットになったものが多い。いまの中国茶の茶器の姿によく似ている。茶の湯が個人や1対1のコミュニケーションを基本にするのに対し、煎茶は「仲間」のものだったんだろうな。
ひとつの展示ケースに、各種の「敷物」と呼ばれる大きな布が、畳んで重ねられていた。中央アジア(ウズベキスタン)やインド由来のものは、ピンク色の草花模様が鮮やか。中国由来のものは、鳳凰や霊獣に加えて、果実や花模様で埋められている。文人たちは、こんなエスニックな敷物を部屋いっぱいに敷いて、煎茶を楽しんだというのだ。江戸の煎茶ブームを意識したのは、京博で特別展観『上田秋成』を見てからだが、こんなにたくさんの煎茶道具を見たのは初めてで、面白かった。
静嘉堂の煎茶道具の蒐集経緯は明らかでないが、明治の実業家、奥蘭田(1836-1897)の旧蔵品が多く含まれるとのことである。「茶道具」と「煎茶道具」の2種類のパンフレット(各350円)を販売していて、後者のみを買ってきた。煎茶器の形と名称の解説もあって、初心者にはたいへん嬉しい。
リニューアルオープン展の第2弾。文化財散歩みたいな中高年の団体客でにぎわっていた。静嘉堂の茶道具といえば、国宝『曜変天目』に重文『油滴天目』。これらはしっかり出ていた。前回、リニューアルオープン展の第1弾でも、サービス(?)でラウンジに展示されていたので、もしや第2弾の展覧会には出ないのではないかと心配したが、そんなことはなかった。曜変天目は、真横から見たショットも色が美しくて好きだ。
唐物茄子茶入の「付藻茄子」と「松本茄子」は、今回あまり詳しい説明がついていなかったが、大坂夏の陣の焼け跡から発見され、奇跡の修復を施されたんだったなあ、と記憶をよびおこしながら鑑賞する。虚堂智愚の墨蹟『就明書懐偈』の軸と飛青磁の小ぶりな花生のとりあわせもよかった。ほかに茶碗は、黒楽、赤楽、御所丸、織部、井戸と、ひととおり揃っている。ここまでが「茶の湯の美」で、だいたい見たことのあるものが多かった。
後半は「煎茶の美」。静嘉堂のホームページは「煎茶器の多数公開は15年ぶり(!) となります」と、自ら「!」マークをつけて紹介している。確かに、見たことのない、めずらしいものが多かった。まず、たくさんの茶銚(ちゃちょう)。急須のことだ。「紫泥」「梨皮泥」「朱泥」「松花泥」など材料の土によって、色と風合いが少しずつ異なる。てのひらに収まるほどのサイズで、丸くて、まっすぐで短い注ぎ口(鉄砲口)がついているのが標準形。磁器の急須とちがって、見た目や大きさにバラエティがないから、ひとつ持っていればよさそうなものだが、名品をコレクションするのが、愛好家の楽しみだったようだ。華やかな更紗を使った仕覆(外袋)が付随していたり、かたちの異なる茶銚八点を一括収納するケースも展示されていた。
湯罐(とうかん)は、見た目は茶銚に似ているが、炉にかけて、お湯を沸かすための道具らしい。茶銚よりも少し大ぶりで、河豚のようにふくらんでいる。どこでも気軽に湯を沸かせそうな、細長い炉と湯罐のセット、いいなあ。煎茶茶碗は小さくて焼きが薄くて、きりっとしている。複数がセットになったものが多い。いまの中国茶の茶器の姿によく似ている。茶の湯が個人や1対1のコミュニケーションを基本にするのに対し、煎茶は「仲間」のものだったんだろうな。
ひとつの展示ケースに、各種の「敷物」と呼ばれる大きな布が、畳んで重ねられていた。中央アジア(ウズベキスタン)やインド由来のものは、ピンク色の草花模様が鮮やか。中国由来のものは、鳳凰や霊獣に加えて、果実や花模様で埋められている。文人たちは、こんなエスニックな敷物を部屋いっぱいに敷いて、煎茶を楽しんだというのだ。江戸の煎茶ブームを意識したのは、京博で特別展観『上田秋成』を見てからだが、こんなにたくさんの煎茶道具を見たのは初めてで、面白かった。
静嘉堂の煎茶道具の蒐集経緯は明らかでないが、明治の実業家、奥蘭田(1836-1897)の旧蔵品が多く含まれるとのことである。「茶道具」と「煎茶道具」の2種類のパンフレット(各350円)を販売していて、後者のみを買ってきた。煎茶器の形と名称の解説もあって、初心者にはたいへん嬉しい。