見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2014年7月@東京:祈りの造形展(五島)、江戸妖怪大図鑑・化け物(太田記念美術館)

2014-07-11 22:43:43 | 行ったもの(美術館・見仏)
五島美術館 館蔵『祈りの造形展』(2014年6月28日~8月3日)

 「祈りの造形」と聞いたとき、私の頭にパッと浮かんだのは仏像・仏画だったが、展示品は写経が圧倒的に多い。奈良時代の写経がこれだけ見られるのは、貴重な機会ではないかと思う。「過去現在因果経」は奈良時代の断簡(耶舎長者出家願図)に加えて、鎌倉時代のものは1巻と断簡3件。高弁こと明恵上人の書跡がいくつか。それから禅僧の墨蹟もあって、なんだか何でもありだな、と少し戸惑った。

 気持ちが落ち着くのは、やはり院政期の人々にゆかりの造形。平忠盛筆『紺紙金字阿弥陀経』、待賢門院璋子の出家に際して(異説もあり)鳥羽上皇の近臣らが制作した『久能寺経』。そして、崇徳天皇に仕えた藤原教長の『般若理趣経』。大きな梵字は仁和寺の覚法法親王の筆とあった。調べたら、白河帝の第四皇子で、背が高く、声が美しく、能筆でもあったという。この時代は、ステキな登場人物ばかりだなあ。

 なお、確か第2展示室のほうだったと思うが、桃山時代の秋草蒔絵の文箱があって、平忠盛筆『紺紙金字阿弥陀経』を収める内箱に「いつからか転用された」という説明が、おおらかで面白いと思った。

太田記念美術館 特別展『江戸妖怪大図鑑』(2014年7月1日~9月25日)第1部:化け物(7月1日~7月27日)

 この夏、第1部「化け物」、第2部「幽霊」、第3部「妖術使い」という三部構成で行われる展覧会。日本の妖怪好きの私は、全部見たい!行きたい!と思っている。いつになく館内に人が多くてびっくりしたが(しかも若者が多い!)それでも「国芳」「北斎」みたいなビッグネームを冠した展覧会ではないので、まあ少し待てば、作品の前に張り付くことができる。

 ああ、やっぱり国芳の『讃岐院眷属をして為朝をすくふ図』は何度見てもいいなあ。国芳には『肥後国水俣の海上にて為朝難風に遇ふ』という類似作品もあるのか。前者が有名になりすぎて、後者の存在はよく知らなかった。会場には、けっこう初めて見る(認識する)作品が多かった。ちなみに国芳の『崇徳院』は第2部に登場。歌川芳艶『白縫姫 崇徳院』とあわせて見たい。歌川一門の「平家の亡霊たち」シリーズもすごーく楽しみ(図録で先行鑑賞中)。

 第1部(現在の展示)に戻ると、同じ主題の作品を集めてみることで、画家のよく工夫が見えて面白い。「羅生門の鬼」などは、その典型。菱川師宣の素朴な構図が、月岡芳年の縦分割を活かしたスペクタクルな画面に育っていくのだな。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする