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見もの・読みもの日記

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試み続ける日本画/竹内栖鳳展(国立近代美術館)

2013-09-20 00:12:44 | 行ったもの(美術館・見仏)
国立近代美術館 『竹内栖鳳展 近代日本画の巨人』(2013年9月3日~10月14日)

 9月15日(日)少し早めに着いたので、ピロティの椅子に座って、強くなったり弱くなったりする雨を眺めながら、しばらく開館を待った。

 竹内栖鳳は、京都画壇で活躍した近代日本画の先駆者。1864年生まれ-1942年没と西暦でいうよりも、元治元年生まれ-昭和17年没というほうが、幕末から昭和に及ぶ激動の時代が思い浮かぶ。そんなに「好き」な画家ではないのだが、NHK日曜美術館の特集が面白かったので、やっぱり見に行こうと決めた。

 展覧会の構成は、だいたい時代順。「第1章 画家としての出発 1882-1891」では、達者な模写に舌を巻く。鳥獣人物戯画図あり、相阿弥あり、雪舟あり。こうやって様々な筆法を体得していくのか。「第2章 京都から世界へ 1892-1908」では、早くも本領発揮。見まわす限り、栖鳳が得意とした「どうぶつ」図で埋め尽くされていた。四方の壁がこんな感じ→「スズメと犬+ライオン」「象+象」「ライオン+虎」「ライオン」。さらに小さなスケッチブックに描かれたサルとウサギが超絶かわいい。次の部屋も、くま!うさぎ!サル!と、私は動物園に来た子どものように興奮してしまった。栖鳳の描く動物たちは、視線のありかに細心の注意が払われているように思う。特に小動物たちは、見てないような何気ないポーズで、画家を(つまり絵の外にいる私たちを)じっと盗み見ていることが多い。

 そして「第3章 新たなる試みの時代 1909-1926」には、日本画の手法でローマ時代の遺跡を描いた『羅馬之図』が登場。テレビでも取り上げられていた意欲的な作品だ。向かいの展示ケースの照明が反射して見にくかったのは残念。所蔵館は「海の見える美術館」(広島県廿日市)なんだな。日の光を受けて、風に舞い散る木の葉なのだろうか、胡粉の白が効果的に散らされているのが面白いと思った。『千山万壑之図』は、伝統的な水墨画の筆法を用いているのに、のびやかな画面構成は全く近代的で、見たこともない風景が広がっている。所蔵先の昌徳寺ってどこだろう? 中国の南方の風景を明るい色彩で描いた作品群も、愛らしくて好きだ。

 むかし、京都市美術館の所蔵品展『画室の栖鳳』(2009年)や同『親鸞展』(2011年)で見た天女図にも再会。東本願寺の御影堂門楼の天井画を構想した際の下絵群である。『アレ夕立に』や『絵になる最初』など、栖鳳は代表作品の下絵が残っているのが面白い。

 「第4章 新天地を求めて 1927-1942」は、還暦以後。「昭和に入ると栖鳳はしばしば体調を崩し」という説明と関係するのか分からないが、大作は少ないように思った。しかし、どの作品も闊達で、色彩に透明感があって、対象をやわらかに包み込むような愛情を感じる。風景も静物もいいけど、やっぱりアヒルやウサギなど、小動物がいい。若い頃、古典の模写に学んだ栖鳳が、この時期には、おびただしい写真を撮っているというのも興味深く感じた。

 晩年の大作『渓流』には、写実とも抽象ともつかない、色と形の面白さにあふれた光景が描かれている。落款がないため「未完」と注記されていたが、これ以上描くことがなくなって筆を措いたのでないかと思われた。
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