見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

平成23年新指定重要文化財など(東京国立博物館)

2011-05-09 23:52:21 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館・本館特別1室・特別2室 特集陳列『平成23年新指定重要文化財』(2011年4月26日~5月8日)

 関西旅行から帰った週末、これだけは見ておかなければ、と慌てて駆けつけた特集展示。個人的に面白かったのは、まず対馬藩作成の『朝鮮国書』(京都大学総合博物館蔵)。 2007年の高麗美術館・特別展などで何度か見ているが、とうとう重文になっちゃったかーと感慨深かった。展示品は、万暦35年(1607)宣祖(李昖)が秀忠に宛てたことになっている。「貴国改前代之非、行旧交之道、苟如斯、則豈両国生霊之福也」。日本が朝鮮侵攻の非を悔いて旧交之道に復するのは、両国の人民によって幸いである、みたいな意味だろうか。対馬藩が作文しているのだけど。

 隣りには東博所蔵の『朝鮮国書』(崇禎16年/1643、仁祖→家光宛て)が並べてあって、これはホンモノらしかった。朝鮮国書には「為政以徳」の印を押すのだが、本物の印のほうがひとまわり大きく、字体も複雑。さらに補筆して印影を整えるのが慣例だが、偽国書はこれを全く怠っている。いい加減だなー。また、本物は楮紙(こうぞ)だが、偽国書は竹紙と楮紙の貼り合わせなのだそうだ。宛名は、本物は「日本国大君殿下」、偽国書は「日本国王殿下」を用いているが、これは時代差のためらしい(1636年以降「大君」号が正式使用となる)。

 鎌倉国宝館の『円覚寺仏殿造営図』が重文になったのは、関東人(もと神奈川県民)としてうれしい。それから、国立天文台の子午儀(パネル展示のみ)が重文指定になったのも、もと関係者としてうれしい。(株)ライオン創業者の小林富次郎(1852-1910)の葬儀を記録した映画フィルムには見とれた。明治末年のフィルムが残っていただけでも驚きだが、そこに撮影されている内容をよみがえらせる技術ってすごいなあ。

 仏像(彫刻)では、岡山・大賀島寺の千手観音立像が異色。腰の前で合掌するのでなく、両手を交差(?)させるようなポーズをとる。膝を曲げて左足を少し浮かせ、斜め懸けの天衣が左右非対称を強調する。顔や腕に比べて、手首から先が大きく、インド舞踊の図みたいでもある。滋賀・千手院の千手観音像は本尊の御代仏(御前立ちみたいなもの?)だが、調べたら本尊より制作年代が古かったそうだ。→写真と詳細は、神奈川仏教文化研究所(特選情報2011/3/23)にあり。

対馬市福岡事務所レポート(2010年08月27日)
たまたま見つけたサイト。対馬宗家に伝わる「為政以徳」印を「対馬の活性化に利用できそうな気がしませんか」って紹介しているけど、これって公文書偽造の証なのだが…いいのだろうか。

■本館 2室(国宝) 『善無畏像・慧文大師像』(2011年4月19日~5月29日)

 兵庫・一乗寺蔵の『聖徳太子及び天台高僧像』は、なかなか見ることのできない優品。全然、型に嵌っていないところが慕わしい。子どもが、いつも慣れ親しんでいるお父さん・お母さんを、自由に描いてみた絵のように思える。

■平成館・企画展示室 企画展示 特集陳列『拓本とその流転』(2011年3月15日~5月15日)

 先だって、京博の特別展『筆墨精神』で、目玉中の目玉扱いされていた上野本『十七帖』が、さりげなく来ていた。王羲之『十七帖』だけで他に3種も並んでいて、びっくりした。こんなにあるのか。それにしても、失われやすい文字の姿を永遠に残すため、碑刻という方法が行われたわけだが、拓本だけ残して失われた碑が多いことを知って、歴史の冷酷さを感じてしまった。
コメント
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