見もの・読みもの日記

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蘭州・寧夏から内蒙古2010【2日目】蘭州

2010-08-20 02:31:17 | ■中国・台湾旅行
 蘭州は、シルクロードに続く「河西回廊」の入口の都市。10年ほど前に初めて来たときは、地味な服装に白い帽子を被った回族の人々が印象的だったが、高層ビルが林立する近代的な街に変貌していた。

■甘粛省博物館

 朝一番、ガイドさんの案内で訪ねたのが甘粛省博物館。開館(9時)より少し早かったので、暫く待つ。今回訪ねた省級博物館は、いずれも毎日、一定人数までは入館無料というシステムを取っていた。まず「検票処」で当日有効の無料入館券を貰い、持ち物検査(かなりいい加減だが、飲料類の持ち込み禁止)を経て入館する。

 同館は、2007年にリニューアル・オープンしただけあって、規模も設備も展示方法も、中国の博物館のイメージを根底から覆す充実ぶりだった。前回の旅行で訪ねたはずの旧館は、よく覚えていない。あとで写真を探して比べてみようと思う。



 いちばん印象的だったのは、やっぱり「馬踏飛燕(ばとうひえん)」。甘粛省武威市の雷祖廟雷台漢墓から発掘された銅馬である。展示室では「馬踏飛燕」前方の大スクリーンに、河西回廊の大草原を映し出し、吹きすさぶ風の効果音が流れていて、ちょっと感動的だった。背後には、38匹の銅馬、14両の銅車、17体の武士俑等々から成る一大隊が粛然と並んでいる。これは展示上の演出?と思ったが、どちらも雷台漢墓の出土品だというから、もとからセットだったのね。

 中国の博物館内は、フラッシュを使わなければ写真撮り放題のところが多い。たくさん撮ってきたので、何かの方法でまとめて公開しようと思っている。しばしお待ちを。

■炳霊寺石窟

 続いて、蘭州市の郊外、炳霊寺(へいれいじ)石窟に向かう。今、ネットで調べたら「市内より85キロ、1.5時間」という情報が出てきた。まあそんなものだったかな。劉家峡ダムで昼食。ここからボートに乗り換える。前回のツアー(日本人6人)も同様で、「遊覧船に乗ります」というから、箱根の山中湖みたいな遊覧船かと思っていたら、「飛魚1号」という快速小型ボートだった。今回は日本人3人+ガイドさんなので、さらに心細い小さなボートに乗り込む。広い劉家峡ダムを縦断し、細い川筋をしばらく遡って、炳霊寺石窟の下船場に到着した。



 整備された遊歩道(前回はなかった?)を少し歩くと、西秦から隋、唐、明、清までの各時代に造営された190あまりの石窟、大小700体近くの仏像が残る炳霊寺石窟が見えてくる。前回は修復中だったため、最も大きな大仏(171龕?)を見上げることしかできなかった。今回、やはり再訪の友人は、公開されている有料窟を全部見るつもりで意気込んでいたが、結局、最も有名な有料窟「169窟」の拝観にとどめることになった。

 169窟は大仏の右肩の上方にあるため、現地ガイドさん(女性)の案内で、岩壁に張り付いた梯子のような急階段をいくつも上がる(男性の警備員も後ろを着いてくる)。かなり大きな窟で、さまざまな時代の塑像・壁画・銘文が混在している。



 先日、奈良国立博物館の『東大寺法華堂金剛力士像特別公開』の壁のパネル(および展示図録)で、この窟に着甲(神将)タイプの金剛力士像があることを読んでいたが、ガイドさんの説明に出てこないので、いちおう聞いてみた。すると、現地では「天王」と呼び習わしている像がそれだろう、と言う。右脇侍が菩薩像、左脇侍が天王(力士)像という、不思議な三尊像である。一段高いところにあるので、梯子に登って近づいてみると、杵のようなものを持っており、なるほど金剛力士像(または執金剛神像)と呼んでもおかしくない、ということを確認する。

 梯子を下り、ボートに戻る途中から雨が降り出す。再びボートで帰途についたものの、次第に風雨が激しくなり、水面が荒れてくる。屋根つきのボートではあったが、窓ガラス(アクリル板?)があちこち外れはじめ、救命胴衣を着けているとは言いながら、生きた心地がしない。ついにダムの縦断を諦め、途中の岸に船を寄せる。ガイドさんが、乗せてくれるというタクシーを探してきたが、女性運転手のほかに、既に助手席に小犬を抱いた女性がひとり。仕方ないので、われわれ3人が後部座席へ、細身のガイドさん(男性)は助手席に無理やり潜り込み、運転手込み、6人1匹のぎゅうぎゅう詰めで発車。まあ中国ではよくあること。

 郊外のロータリーでタクシーを降り、劉家峡ダムから駆けつけてきた、われわれの専用車に拾ってもらう。やれやれ。かくて蘭州市内に戻ったのは、長い夏の日も落ちたあと。観光初日から大冒険だった。

(8/31記)

コメント (1)
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