見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

お盆旅行2010:至宝の仏像+仏像修理100年(奈良国立博物館)

2010-08-16 14:17:43 | 行ったもの(美術館・見仏)
 お盆旅行4日目の8月16日。「奈良博は16日(月)も開いてますよ」と教えてくれたのは、いつもの京都の仏友。この展覧会に一緒に行く約束をしていたのだが、当日朝、「腰痛のため断念」のメール連絡が入る。で、先々週の週末に、はじめて見仏ツアーをご一緒した、もうひとりの”年下の友人”とふたりで参観。

奈良国立博物館 なら仏像館 開幕記念 特別展『至宝の仏像 東大寺法華堂金剛力士像特別公開』(2010年7月21日~9月26日)

 入口を入ると、思わず、おお~と声が出てしまった。第1室に当たる大きな展示ホールには、かつて、かなり長い期間(6年間)、唐招提寺の薬師如来像が中央にいらっしゃった。その巨像がいなくなってしまったあとも、中央には柱状のモックアップが置かれて、視線を縦方向に集めるデザインになっていた(※2006年10月の記事)。今回は、横方向に見晴らしのよい空間に一新されたように思う。第1室に数歩足を踏み入れると、左の側室に展示された「東大寺法華堂金剛力士像」の姿の一部が目に入ったが、いや、まだまだ、とはやる気持ちを抑えて、中央および右の側室から見ていく。

 私は、中央ゾーンの仏像よりも、左右のケースのいちばん端に展示された仏像に惹かれた。右手にはずんぐりした園城寺の千手観音立像。むかしから奈良博で見ているが、好きな仏像だ。左手には地幅寺十一面観音立像。遠目にはそうでもないが、近寄ると、なんだか表情がいい。あと、中央ゾーンの奥(以前のとおり東大寺西大門勅額の展示されている裏側)においでの新薬師寺の十一面観音、これはスタイル抜群。腹は出ているが、ウェストの位置が高く、足が長くてきれい。

 さて、法華堂(三月堂)の金剛力士像であるが、さまざまな角度から、表情の変化や細やかな造型の工夫を楽しむことができる。特に背面を覗いたときは、思わぬ金と彩色の残り具合にびっくりした。下半身に比して、上半身が大きすぎる感じがするのは、力強さの演出もあるけれど、もう少し低い位置から見上げることが想定されているのかもしれないと思った。

 解説パネルに教えられたことも多かった。金剛力士には、着甲の「神将タイプ」と上半身裸体の「中国式力士タイプ」があること。中国でも着甲(神将)タイプはめずらしいが、いくつか例があり、そのひとつが炳霊寺第169窟であること。え!実は私は19日から中国に発ち、20日(金)には蘭州の炳霊寺石窟を見学予定なのである。「169窟、忘れず見てきてください」と同行の友人に念を押される。

奈良国立博物館 特別展『仏像修理100年』(2010年7月21日~9月26日)

 続いて新館へ。奈良博のサイトには、鎌倉・円応寺の初江王坐像(鎌倉国宝館寄託)や東大寺南大門仁王像の写真が掲載されていたので、南大門仁王像はともかく、やはり仏像がたくさん見られる展覧会なのだろうと勝手に思っていた。そうしたら、文書とか写真とかモックアップが中心の展示で、一瞬、拍子抜け。しかし、読み込んでいくと、これがなかなか面白い。明治や大正の修理はこんなふうだったのか、とか、修理の理念、技術、かかわった人々の人間模様みたいなものも窺えた。興味があれば一人でも楽しめると思うが、「なんだこれ」みたいな勝手な感想(※伎楽面『獅子』を見て→写真あり)を言い合える同行者がいると、楽しみ倍増。

 それぞれ展示図録あり(各1,000円)。リーズナブルな値段設定、内容豊富で嬉しい。ゆっくり落ち着いて読みたいと思う。ミュージアムショップを少しうろつき、奈良博を出たのは13:30近く。開館と同時に入って、4時間見ていたことになる。お昼過ぎには東京に帰ろうなんて、空しい皮算用だった(8/17記)。
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