見もの・読みもの日記

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夢は外地を駆け巡る/日本鉄道旅行地図帳:朝鮮・台湾、満洲・樺太

2009-12-06 23:55:18 | 読んだもの(書籍)
○今尾恵介・原武史監修『日本鉄道旅行地図帳:歴史編成:朝鮮・台湾』『同:満洲・樺太』(新潮「旅」ムック) 新潮社 2009.11

 「日本の鉄道、全線・全駅・全廃線のすべての位置を正確に記載した初の地図」として人気(100万部超え)の「日本鉄道旅行地図帳」に新たに「歴史編成」のサブシリーズが加わった。戦前外地を「朝鮮・台湾」「満洲・樺太」の2冊に編集したものだ。歴史好きと鉄道好きを兼ねる(ただし、どちらもアマチュア)私のような人間には、神棚に祀りたいようなアイテムである。

 豊富なデータ、見やすさ重視の実用性は徹底している。当然のごとく、路線ごとに全駅名の一覧(駅間距離、開業・改称・廃止等の年月日、駅名のよみ※日本語読み)付きである。各線の沿革、軌間(線路の幅)、動力の種類(蒸気、内燃)、電気鉄道の場合は電圧も。「一目でわかる東京からの時間・距離(昭和15年)」からは、具体的な旅のイメージが湧いてくる。東京から満洲国の新京(現・長春)までは4日。上野→新潟航路→羅津(現・北朝鮮)経由でも、東京→下関航路→釜山経由でも、あまり変わらなかったんだな、とか。

 地図には、各都市の名産品が注記されており、納得できるものもあれば、意外なものもある。台湾は、バナナ、サトウキビが多いが、台東の「栗饅頭、レモン羊羹」、新北投(台北北部の温泉地)の「萩の餅、湯の花」って…。史跡や車窓の絶景に関する注も行き届いているが、北朝鮮の海岸線に「奇岩が海に突出」とか「無限に続く如き白砂青松」と、のどかな解説が添えられているのを見ると、当時は、この路線を日本人が行き来していたんだよなあ、と感慨に誘われる。今も風景はそのままなのだろうか。

 当時の駅弁掛紙(!)、切符、旅行案内などカラー図版も見飽きないし、読みものも楽しい。私が感銘を受けたのは、満鉄の象徴「超特急あじあ号」の機関車(パシナ)が何色だったか?という問題。残っている写真は全てモノクロなのだそうだ。編集部が入手した唯一の色刷り資料は、昭和10年の路線図が描かれた絵葉書で、濃藍色のパシナが緑色の客車を牽引している。よく見つけたなあ。雰囲気は、新潮社オンラインショップのページ(満鉄あじあ号オリジナルグッズ発売)で。
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