見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

秘色・青磁の美/出光美術館

2006-07-26 22:00:19 | 行ったもの(美術館・見仏)
○出光美術館 やきものに親しむV『青磁の美-秘色の探求-』

http://www.idemitsu.co.jp/museum/index.html

 「やきものに親しむ」シリーズの第5回だそうだ。気になるので、過去にどんな企画があったか、調べてみた。

I. 世界を魅了したコバルトブルーの陶磁器(2002年)
II. 皇帝を魅了したうつわ-中国景徳鎮窯の名宝-(2003年)
III. 磁都・景徳鎮1000年記念 中国陶磁のかがやき(2004年)
IV. 中国・磁州窯-なごみと味わい-(2005年)

 第1回だけは、行ったかどうか記憶が定かでない。2003年の『皇帝を魅了したうつわ』は印象的だった。明清の皇帝の即位順に、それぞれの時代(治世)の「うつわ」の特徴が説明されていて、とても分かりやすかった。この頃から、俄然、陶磁器の魅力に目覚めたのである。第3回の『景徳鎮』と第4回の『磁州窯』については、このブログにも書いているので繰り返さない。

 さて、今年は青磁である。「やきものは青磁がいちばんいい」という友人がいる。私は「そうね」と言ってみるけれど、本心は染付(伊万里、鍋島、古九谷など)の分かりやすい魅力に動かされてしまう。青磁のシンプル・ビューティが分かってこそ、通人なんだろうけど。

 会場に入ると、なるほど見渡す限り、青磁が並んでいる。しかし、思ったほど一様ではない。えっ、これも青磁?と首をひねりたくなる色合いの器もある。我々が「青磁」と聞いて反射的に思い浮かべるような、明るい空色~青緑色の磁器を安定的に生産できるようになったのは、宋代以降のことだ。それ以前の「青磁」は青と灰色の中間のような色をしている。

 青磁の産地としては、古くは(後漢~西晋時代)浙江省の越州窯が有名である。そもそも青磁の別名「秘色」とは、晩唐の陸亀蒙(りっきも)が『秘色越器詩』の中で「九秋風露越窯開、奪得千峰翠色来」と詠んだ越州窯青磁に由来するそうだ。近年、西安の法門寺から「秘色瓷」と記された文書が、磁器と一緒に出土したため、「秘色青磁」の実体が明らかになった。でも、こんな曖昧な青緑が「秘色」なのか~? イメージ狂うなあ。

 さて、宋代に登場するのが耀州窯(陜西省)、龍泉窯(浙江省)、南宋官窯(浙江省)、汝窯(河南省)など。日本人には「天龍寺青磁」の故郷である龍泉窯が名高いが、今回、私は耀州窯のうつわにハマってしまった!! 初めて見るわけではないのに、「出会い」の瞬間は、突然、来るのである。

 耀州青磁はオリーブグリーン色をしている。典型的な作品は、へらを使った「片切り彫り」で花文を彫り入れ、透明感のある濃緑の釉薬を掛ける。すると氷に閉じ込められた水中花のような文様が浮かび出る。昨年、熱をあげた磁州窯が、粋な町家のおかみさんだとすれば、耀州窯は、優雅で貞淑な貴婦人である。前日、『イギリスの美しい本』展で見た、ウィリアム・モリスの美学にも通じる気がする。来月は西安に行くことになっているのだが、耀州青磁、たくさん見られるといいなあ。

 最後に、関連展示の『盆栽図屏風』(江戸時代、作者不詳)が面白かった。木桶あり、塗物あり、染付、青花、金襴手あり、さまざまな器に盛られた盆栽を描いたものづくし屏風である。

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
青磁といえども (Tak)
2006-08-23 21:59:20
こんばんは。



行ってきました!

「青磁」と一口に言っても

ほんと様々な色合いがあるのですね。



TB送らせていただきました。
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