見もの・読みもの日記

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お薬師さま、日本海を渡る/新潟県立近代美術館

2006-10-26 08:28:13 | 行ったもの(美術館・見仏)
○新潟県立近代美術館 企画展『新潟の仏像展』

http://www.lalanet.gr.jp/kinbi/

 この秋は、東京国立博物館の特別展『仏像』展に触発されたわけでもないだろうが、仏像の企画展が多い。山梨県立博物館の『祈りのかたち 甲斐の信仰』、神奈川県立金沢文庫の『霊験仏』、福岡市博物館の『空海と九州のみほとけ』、大分県立歴史博物館の『み仏の美とかたち』など。

 九州はちょっとムリかもしれないが、関東上信越は制覇したいなあ、と思っていた。新潟県立近代美術館は新潟県長岡市にあるが、調べてみたら、十分東京から日帰り圏である。そこで、日曜日、さっそく行ってきた。会場には、佐渡を含む新潟県各地から50体を超す仏像が集められていた。

 最初のセクションでは、「朝鮮三国・飛鳥・奈良時代」に該当する仏像と残欠が9点。こんな古い時代の仏像が、こんなに残っていることに驚く。でも、考えてみれば、古代の先進文化は日本海を渡ってきたのだから、関東なんかより、ずっと文化の中心圏だったわけだ。それでも、願成寺(五泉市)の観音菩薩立像などは、いい意味でひなびた表情で、溌剌とした農村の少女を思わせる。

 次の「平安時代」に進むと、この展覧会随一の見もの、佐渡国分寺の薬師如来がおいでになる。力強くて、重量感があり、鼻筋の通った横顔は、沈鬱なまでの真摯さに満ちている。私の好きな、平安前期彫刻の典型である。顔面の金箔の剥げ具合もいい。しかし、衣のひだの彫り込みはやや単調である。前に突き出した手のひらはちょっとデカすぎるし、腕も太すぎる。首が肩にめり込んでいるのも野卑である。ふと気がついて、膝を折って、少し視点を下げてみた。すると、坐像の背丈が伸びたように感じられ、上に挙げたような欠点は、あまり気にならなくなる。

 このほかも、平安前期の仏像は、京都・奈良にひけをとらない洗練された造型が多いが、平安後期になると、地方仏らしさが際立つ。寛益寺(長岡市)の十二神と二天(持国天、多聞天)はその典型であろう、。十二神には、唐風の立派な鎧を身につけたものもいれば、一兵卒のような簡単な鎧姿のもの、裸の上半身にスカーフをまとっただけのものもいて、類例のない自由なポーズや表情が楽しい。

 鎌倉以降になると、再び新潟の仏像は、都びた洗練を発揮する。特筆すべきは肖像彫刻の素晴らしさである。善導寺(上越市)の善導像は、浄土を夢見るロマンチックな青年の面影をあらわし、称念寺(上越市)の一鎮上人像は、人生の機微を知る老人の叡智を感じさせる。

 常設展では、デューラーの木版画集『黙示録』が展示中で楽しめた。長岡って意外と近いんだな。

 ちなみに、今週末は関西!

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