見もの・読みもの日記

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アメリカの民話/ディズニーの魔法

2004-07-21 14:09:07 | 読んだもの(書籍)
○有馬哲夫『ディズニーの魔法』(新潮新書)2003.11

 私は子供の頃、ディズニーの長編アニメがあまり好きではなかった(好きだったのは、むしろ動物ものなどの実写ドラマだった)。だから「白雪姫」「シンデレラ」「眠れる森の美女」など、ウォルト・ディズニー時代の長編アニメをあまり記憶に残していない。これらは、むしろ「読んだもの」として、ずっと強い印象を今日に残している。

 まして最近の「リトル・マーメイド」や「美女と野獣」になると、見ようとも思わなかった。かくして今回初めて、ディズニー版のストーリーの改変ぶりを知って、かなり呆れてしまった。

 うーん。そこまでやるのか、という感じである。「リトル・マーメイド」のアリエルは、明るく屈託のないヤンキー娘で、積極的に王子を誘い、最後には愛を成就させる。何も失わず、願ったものは全て手に入れてしまう。

 「美女と野獣」はフェミニズムの寓話である。ハンサムで男らしく村娘の憧れの的--しかし一種のセクシストであるガストンを敵役に副え、ベルは改悛したセクシストである野獣を夫に選ぶ。

 著者の言うように、それぞれの時代は、それぞれの時代のメディアによる「民話」を必要とする。「民話」は語り手と受け手の希望--つまり、語りの場に応じて改変され、語り継がれていくものだと思うから、ディズニーのやったことが特に悪辣だとは思わない。

 でも、それにしても、この改変は薄っぺらな気がする。こんなものを与えられて育つ子供たちは、ファーストフードが世界一のご馳走だと思わされるようなもので、かわいそうだと思うんだが、そもそも親の世代が、本物の文学を読む喜びを知らないのでは、どうしようもないか。
コメント
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