「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

ジャズ「Art Pepper meets The Rhythm Section]を聴く

2019年10月23日 | 音楽談義

県内在住の「K」さんから寄稿していただいた4曲のジャズ解説について既に「サムシン・エルス」「カインド・オブ・ブルー」を紹介させてもらったので、今回は第3弾目として「アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション」を取り上げてみよう。

周知のとおり「音楽の3要素」はメロディ(旋律)、ハーモニー(和声)、リズム(律動)だが、クラシック音楽にやや足りないものがあるとすればそれはリズムではないかと思っている。

ときどき無性にジャズが聴きたくなるのもそういう理由があるのかもしれない。

たしか「五味康介」さんの本だったと思うが、あの指揮者カラヤンが練習中のオーケストラのリズム感に飽き足らず、そういうときはこっそり脱け出してジャズを聴いていたという話が載ってた。

ましてや、一介の市井の音楽ファンであれば何もクラシックに固執することなく、ときどきはジャズも聴いて耳を肥やすことも必要だと思いますよ(笑)。

    

1957年マイルスが西海岸へ演奏旅行に来た折、コンテンポラリーのレスター・ケーニッヒがマイルスの許しを得て当時のマイルスのリズムセクションとアート・ペッパーを邂逅させたアルバム。

メンバーは、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)からなり最強と言われた。

不調のペッパーには極度の緊張を恐れて録音のことは直前まで知らされず、またマウスピースのコルクも傷んでいたのに、麻薬を打って臨んだというエピソードがある。にもかかわらず、この演奏は会心の出来栄えとなった。

著名な「You’d Be So Nice To Come Home To」のペッパーのアドリブを聴くと、その絶妙な音列配置の間隔が生み出す危うさ、刹那感がたまらなくクセになる。当代一流のリズムセクションをバックに、堂々と渉りあうプレイは神ってると言う他はない。

プロデューサーのレスター・ケーニッヒはハリウッドの映画産業に従事していたらしいが、マッカーサーの赤狩りで映画界を追われてJAZZレコードのレーベルを立ち上げた人物。

アメリカの西海岸の主要産業である映画産業は、トーキー時代に入ってオーディオを副産物として育てることになる。Westernを先駆けとして、Altec、JBL等の音響機器メーカーが誕生する。

まさに、映画がオーディオを育てたといっていい。そんな時代に誕生したキャピトルレコードでエンジニアとして、シナトラ、ナット・キング・コールらを録音していたロイ・デュナンを引き抜いた。

そして録音スタジオもない配送倉庫の片隅で、自作の録音アンプ、調整卓で奇跡としか言いようのないコンテンポラリーの名録音が生まれるのである。

ロイ・デュナンの録音は、カリフォルニアの空を思わせるような明るくクリアーで、どちらかと言うと響き、空気感を捉える録音が特徴。垢抜けた西海岸の白人JAZZにぴったりの音づくりだ。

バラックの倉庫の片隅で楽器間の音漏れを防ぐ立派な遮蔽板もなく、そこそこ漏れ入ってくる別のマイクに入った音がかえって臨場感を生み出したのかもしれない。

使用マイクは、ノイマンU-47、AKGのC-12、テープレコーダーはAMPEX 350で、ヴァンゲルダーと似ている。しかし全く正反対の音になっているのは感性の違いもあるが、リヴァーブを加えてカッティングの際にゲイン等を微妙に調整し、詳細なマスタリング・メモを残した。

このメモがなければ、オリジナルのテープを入手しても、ロイの作ったアルバムの音を再現することはできないという。

この解説を念頭に置きながら我が家でもじっくり聴いてみたが、「サムシン エルス」や「カインド オブ ブルー」に比べると随分穏やかなというか、プレイヤーが肩ひじを張ってなくて自分のような門外漢でも随分溶け込みやすい印象を受けた。

こういうジャズもありなんですね~。


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