通常、コピー用のCD-Rといえばせいぜい150円程度、それもまとめ買いすれば100円ぐらいというのが”おおかた”の相場というものだろう。
それが、10枚セットの消費税込みで7,980円のCDーR(CDR-80SPMPT)をネットで見かけた。つまり1枚約800円なり。最近では録音済みのCD原盤が500円程度で売られている場合もあるので随分と割高な勘定。
しかし、これだけの値段をつけている以上よほど性能に自信があるのに違いない、一度購入して試してみようかとすぐに食指を動かすのが「オーディオ愛好家」という人種。早速注文したのはいうまでもない。
とりあえず、オーディオ仲間のM崎さんに「1枚800円の高性能のCDーRを知ってますか?」と、やや自慢げにお訊ねしたところ案の定、ご存じなかった。
しかし、M崎さん、返す刀で「おそらく値段ほどの差はないんじゃないかな。多分そういうCD盤はエッジを丸くしてあると思うが自分の場合は独自に工具でエッジを丸くしているのであえて購入する必要性を感じない」とのこと。
ウーム、そうきたか!
いつぞやのブログでCD盤の円周部分の90度に角ばったエッジが高速回転時にレーザー光線を乱反射して音質にマイナスになるとの話を投稿したことがある。
爾来、回転ドリルを使ってヤスリなどで工夫して小まめに手持ちのCD盤のエッジを丸くしてきたところだが、このCD-R盤は最初から丸くしてあるとなると相当に音質を研究したメーカーに違いない。
さて、注文したCDーRが届いたのが29日〔日)の午前中。丁度、図書館に出かけていて留守中だったのでカミサンが「代引き」で受け取っていた。
「マズイ」と思ったが、まあ1万円以内の買い物だからと大目に見てくれたようで小言なし、別にご機嫌の方も悪くなさそうでホット一息。
しかし、自分の「小遣い」で買うのに何でこんなに気兼ねしなければいけないんだろう?
それはさておき、早速、封を開けて真っ先にエッジ部分を確かめたところ記録する面の円周部分を見事に丸くなめらかに加工してあった。さすがによく「分かっている」メーカーである。また盤面にもきちんとシールが貼ってある。微細なゴミの吸着を予防したものらしいが極めて念の入ったつくりといえる。さすがに高価だけのことはありそう。
「記録面に貼り付けてあるシール」
さ~て、あとは肝心の通常の価格の約5倍の値段と性能とがつり合うかどうかの確認。
こればかりは実際に音声信号を記録して確かめる以外に方法はない。夕食後に早速作業にかかった。
こういうときに助かるのが「iTunes」。
先般、パソコン用の外付けCD-Rドライブを購入したのをきっかけに「iTunes」をジャンルごとにきれいに再整理していたのでCDーR盤作成用の「プレイリスト」の編成もお手のものとなった。これも次の解説本のおかげ~。
「iPodパーフェクトガイド2010」(2009.10.26)
そして、試聴の対象はM崎さんのご希望に沿って内田光子さんが弾く次のCD盤に決めた。
ベートーヴェンの後期の作品はひときわ高い山を仰ぎ見る感があるが、そのうちでもこれは白眉とされる作品。
長年にわたってこの曲目は「バックハウス」の演奏にトドメをさすと思ってきたが内田光子さんの演奏はどうだろうか。以前聴いたときとは装置も様変わりしているので新たな興味が湧いてくる。
ともあれ、まず、外付けCD-RドライブでこのCD盤を「iTunes」に取り込んで1と2の作業へ移る。
1 「iTunes」から4倍速で通常の音楽用CD-Rに収録
2 「iTunes」から4倍速で今回のCD-R(80SPMPT)に収録
3 原盤
以上の3種類のCDを比較試聴してみた。
試聴のポイントは、とにかく3が出生地なのでこれに1と2がどれだけ肉薄できるかということに尽きる。
使用するCDトランスポートは「ワディアの270」、DAコンバーターは「ワディア27ixVer3.0」だから、まあ不足はあるまい。
まず1を聴いてみたがやや響きが少ない印象を受けたものの充分鑑賞できる範囲。
次に2を聴いてみたが、これがあまりの違いに愕然。ピアノの響きがまったく違うのである。粒立ちの良さというか、磨きぬかれた一音一音が立体空間の中をゆったりと漂っている気配がして思わず鳥肌が立った。まるで振るいつきたくなるような音。
途中でCD-R盤をトレイから引き出すのが惜しくてとうとう30番と32番をまるごと聴いてしまった。これほどの名曲と名演奏と名録音に正面から対峙すると何ものにも替えがたい至福の時間となる。
改めて内田さんの演奏に大感激した。女流なのに(?)この深遠なソナタをこれだけ弾きこなすのだから何も言うことなし。本当の美は人を沈黙させる!
もう「音質の比較」なんてどうでもいい気分になったが、このブログを仕上げる以上そうもいくまい。
この音質なら800円でもすっかり納得。いやあ、参りました。
次に3を聴いたが2との差はごくわずかで、よほど注意しないと違いが分からない。3の方がやや音階が明瞭になる程度。
翌日の30日(月)は先日お借りした「大地の歌」のCD盤3枚をお返しに湯布院のA永さん宅に直行。ついでに上記の3枚のCD盤を携行したのは言うまでもない。
ウェスタンの「555+15Aホーン」が朗々と、憎らしいほどに”ふてぶてしく”鳴っている中、これら3枚を一緒に試聴したところA永さんもあまりの情報量の違いにビックリされていた。
A永さん曰く、3が10点だとすれば2が8~9点、1が4~5点とのこと。自分もまったく同感。
これからは、歌謡曲やポップスのコピーは普通の音楽用のCD-Rで十分だと思うが、クラシックはダイナミックレンジが広いので「SPMPT」のCD-Rに限ると思った。
それにしてもこのCD-Rはどうもエッジを丸くしている以上にいろんな工夫をしているように思える。そうでないとあんな豊富な情報量は湧き出てこない。
改めてネットで検索してみると次の情報があった。興味のある方は「CD-R SPMPT」をクリック。
とにかくどんなに値段が高くても性能が見合うと思えばまったく損した気分にならない。このCD-Rが今後ますます普及して、いい音質がもっと楽しめるようになれば音楽愛好家にとって実に喜ばしいことと思う。
追伸:12月2日〔水)
オーディオ仲間の奈良県のM中氏からメールをいただいた。要旨は「「iTunes」を経由して”取り込み”と”書き込み”を行うと2回の変換となる。それよりも、別のソフトを使って両者を同じレートでもってコピーする方がずっといいのでは」とのこと。あくまでも”音質にこだわる”のなら”そうすべし”と納得。貴重なご意見ありがとうございました。