「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

音楽談義~モーツァルトのファゴット協奏曲~

2012年01月20日 | 音楽談義

「作家は自身が一冊の本なんだ。一作だけ翻訳しても彼の身体の一部を切り取ったにすぎない」と、「本の寄り道」(2011年10月30日、鴻巣友季子:翻訳家、文芸評論家、河出書房刊)の228頁に書いてあった。 

                       

「作家」を「作曲家」に言い換えて「作曲家は自身が(すべての)曲目なんだ。一曲だけを聴いても彼の身体の一部を切り取ったにすぎない」と、つくづく思い知らされたのが次の出来事だった。

 以下、その顛末を記してみよう。

先週末に帰省した娘と雑談しながら小さなラジカセでCDを一緒に聴いていたら、実に耳触りのいい音楽が聞こえてきたので「もしかして、これはモーツァルトの作曲かな~」と当てずっぽうで言ったところ、娘から「当たり~、さすがお父さん!」の声が。

            

この”当たり”の曲目は第10トラック「ファゴット協奏曲~第二楽章」だった。

これまで娘が購入したCDを何気なしに聴いて好きになった歌手は結構多い。「エンヤ」、「サラ・ブライトマン」、「エンニオ・モリコーネ」(映画音楽の作曲家)といったところだが、まさかクラシックで気に入った曲目を発見するとは夢にも思わなかった。しかも、モーツァルトの曲目で!

あまりに聴き心地が良かったので、再度リクエストしてじっくり聴かせてもらったが思わず目頭が熱くなるほど心に染み入った。

解説によるとわずか18歳のときの作品だというが、モーツァルトの才能に改めて舌を巻いた。

また、
低音も高音も、音の鮮度もまったく物足りない小さな「ラジカセ」なのに曲目自体がいいとオーディオ装置のレベルなんて関係ないのを改めて実感した。

それにしても「まだまだモーツァルトには隠された名曲が多いんだなあ」と思わず嘆息すると同時に、つい先日のオペラ「魔笛」に関するブログで、知ったかぶりをして小賢しく「魔笛以外のモーツァルトの曲目は才能の浪費ではないか」と言い放った自分が何だか恥ずかしくなってしまった。

たしかに「魔笛」はモーツァルトの最高傑作だとは思うのだが、とても(モーツァルトは)「魔笛」だけで”ひと括り”に出来るような単純な作曲家ではないことを痛切に思い知らされたというわけだが、そういう思いを強くしているときに、たまたま冒頭の言葉を見かけてピタリと胸に収まったというわけ。

そういえば、近年聴いているモーツァルトの曲目は「魔笛」をはじめ「ドン・ジョバンニ」「フィガロの結婚」などのオペラばかりで、それに時々「ピアノ・ソナタ」や「室内楽曲」が加わるぐらいで他の曲はあまりCDトランスポートの卓上とは縁がない。

いまさら聴かなくても「もう分かっている」というわけだが、これを機会にと悔い改めて久しぶりに次の曲目を引っ張り出してきて、娘を誘ってオーディオ装置の前にどっかりと座りこんだ。

「フルートとハープのための協奏曲K299」(ランパル&ラスキーヌ)、「ディベルティメントK136第二楽章」(コープマン指揮)、「ホルン協奏曲K412~」(カラヤン指揮)、「フルート協奏曲K313・オーボエ協奏曲K314」(ベーム指揮)、「ポストホルン・セレナーデ」(マリナー指揮)

このうち白眉なのは、やはり「フルートとハープ・・・」で、「魔笛」からは伺えない洗練された優雅さと華麗さの極みが感じられ、改めてこれほどの名曲だったのかと心の底から唸った。娘も、これと「オーボエ協奏曲」が特に気に入った様子なのでしばらくCDを貸してあげることにした。

ところで、前出した「ファゴット協奏曲」だが、この演奏は指揮者が岩城宏之さんとあって、奏者も日本人だがCDに登場するぐらいだからうまい方には違いないが、海外盤ではどういう演奏があるのだろうかと「HMV」を覗いてみると、カラヤン指揮(ベルリンフィル)とベーム指揮のがあった。

せっかく好きになった曲目なので、せめて最高の演奏と録音で聴きたいというのが人情というもの。

カラヤンは前回のブログ「ヨーロッパの三大オーケストラ物語」によると、ブルリン・フィルの在籍時期によって指揮に少しムラがあるようで、ベームの方が無難と言えば無難だが、はたして、どちらを購入したらいいんだろうかとちょっと迷ってしまう。

むしろポイントはファゴット奏者なのだろうが、こればかりは皆目、見当がつかない~。

それから最後になったが、冒頭に紹介した「本の寄り道」は全部で240冊の本の書評集だが、「紹介してあるすべての本を読みたい」と思わせる著者「鴻巣 友季子」(こうのす ゆきこ)さんの卓抜した文章表現力には驚いた。

世の中にはすごい才能の持ち主がいる!
  

 

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