文明が発達したこの平和な世の中にまるで降ってわいたような今回の「コロナ禍」だった。目に見えないウィルスがこれほどの猛威を振るうとはだれにも予想できなかっただろう。
同じように世界的に蔓延した「スペイン風邪」が100年前というから、百年に一度の災厄ともいえる。
このところ、ようやく収束気味の傾向にあるが「ウィルスを完全に制圧するのは無理なので共存していこう」が、ノーベル賞受賞者の山中教授などの学識者によって提唱されているので長丁場になることは必至だし、これからの社会の仕組みにも大なり小なり影響を与えていきそうだ。
このほど「日経新聞」に「コロナ時代の仕事論」と題して「楠木 建」氏(一橋大学教授)が「絶対悲観主義の勧め」を投稿されていた。
スマホでご覧になっている人は無理だろうが、パソコンなら字が大きく見えて判読可能だと思うので内容の詳述は避けるが、要約すれば次のとおり。
「仕事哲学として物事が自分の思い通りにうまくいくという期待をなるべく持たないようにする。
<ま、うまくいかないだろうな・・・・、でもちょっとやってみるか>と構えておく。こういうマインドセットを絶対悲観主義と呼んでいる。」
これって、我が家のオーディオに対する対処方針と見事に符合しているんですよねえ(笑)。
いつもマインドセットのツマミを「悲観方向」に回しているので、たとえ失敗しても「ま、いっか」で済む。
このブログではいつもオーディオの成功事例ばかり載せているようだが、その背景には失敗事例が山ほど横たわっているのをご存知だろうか。
ほら、パチンコ好きが儲けたときのことしか話さないのと同じで、巧くいかなかった話はなるべくしたくないというのが人間心理というもの。
ほんとうは失敗事例の中にこそ、物事の本質に近づけることが多いのだろうが、やはり「一寸の虫」にも「五分の魂=プライド」というものがありましてねえ(笑)。
そこでタメになる失敗事例についてだが、オーディオの場合でいえばやはり「実害」を伴うものが最たるものだろう。
そこでふと思い出したのが8年も前のブログ。
「WE300B」真空管についての解説の中の一部を引用して終わりとさせていただこう。
WE300B真空管は、過去に軍事用の通信機器に使用されていたこともあり、国策としてアメリカ政府が多大の予算を割いて作らせていたという逸話がある。
なにせ「敵との交戦中に真空管が故障して通信ができませんでした」とあっては責任重大、何物にも代えがたい多くの貴重な人命が失われる可能性があるので、ツクリは精緻を極め、不良管の選別検査は厳格そのもので普通の民間の真空管とは耐久性のレベルがまったく違う。まあWE300Bに限らず総じて軍事用の製品はハイレベルといっていい。
それにしてもWE300Bは何という優雅な形をしているんだろう。明らかに工業製品の域を脱して、もはや美術品といっても差支えないほどの佇まい。それでいて音が抜群にいいんだから・・・。まったく、魂をすっかり吸い取られそうな魅力を放っている!
ウェスタンの世界は真空管をはじめアンプ、スピーカーなど奥が深くて先達も多いし、とても自分ごときが語る資格はない。
以下、伝聞だがこのWE300Bにもピンからキリがあって、「最上の音」とされるのは「刻印」と称されるもので、ロゴが真空管のベースにわざわざ彫り込んであり、「幻の真空管」として先ず手に入れるのは至難の業。製造されたのは1940年代で、値段の方も目の玉が飛び出るほどでオークションでは程度が良いペアともなるとおよそ100万円近くする。
これはずっと昔のオーディオ専門誌「無線と実験」に書いてあった記事だが、あるマニアがこの「刻印」をアンプから外して冷たい床に置いた途端、ピシリと真空管のガラスにヒビが入って使いものにならなくなったという逸話が今でも脳裡に焼き付いている。
実にお気の毒~。おそらく自分ならショックのあまりしばらく寝込んでしまったに違いない。
以上のとおりだが、古典管を一時的に抜いたり、保管したり、あるいは送付するときはくれぐれも「縦置き」にすることを忘れないようにしましょうね!
ちなみに、これが我が家の保管状況です。
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