テレビ番組の「下町ロケット」(TBS系)がとても面白い。去る15日(日)の放映が第5回目だったが、無事ロケットが打ち上がってめでたく大団円。6回目からは「医療関係」の話に移るようで、これもまた愉しみ。
この「下町ロケット」の原作だが、このブログでもおよそ4年前に「濫読」(2011.1.23)と題して取り上げている。「先見の明」を誇るわけではないが(笑)、折角なので再掲させてもらおう。以下のとおり。
「ここ10日間ほど入退院をはさんで生活環境が激変。こういうときに「何時でも」「どこでも」「手軽に」対応できる趣味は何といっても「読書」に尽きる。
この機会にと図書館から借りてきて、そのままにしておいた本を読み漁った。ザッと挙げてみると次のとおり。
☆ 「下町ロケット」(新刊:池井戸 潤) ☆ 「再会」(横関 大) ☆ 「訣別の森」(末浦 広海) ☆ 「ミステリーの書き方〔新刊)」 ☆ 「エッジ(上下巻)」(鈴木 光司) ☆ 「ポーツマスの贋作」〔新刊:井上 尚登) ☆ 「闇の底」(薬丸 岳) ☆ 「島田 荘司全集Ⅲ」 ☆ 「民宿雪国」(新刊:樋口 毅宏)
やっぱりというかミステリー系が多い中で一番面白かったのは「下町ロケット」。
本書のあらすじだが「宇宙科学開発機構」に勤める主人公の「佃 航平」はロケット開発の優秀な技術者だったが、打ち上げの失敗とともに責任を負って退職する羽目となり、父親の後を継いで今では”しがない”下町の工場経営者に転身。
それでもロケット打ち上げの思いは断ちがたく地道に研究を続けて、技術開発の生命線ともいえる「バルブ」の特許を取得。その特許をめぐって大手メーカーと競合しながらあの手この手で宇宙ロケットの夢の実現にまい進していくというスト-リー。
とにかく中小企業と大企業と取引銀行との虚虚実実の駆け引きが面白く、最後は中小企業が勝つというのが痛快で、読後感がことのほか爽やかで心地よい。
著者の「池井戸 潤」氏は慶応大を卒業後、大手銀行に就職するも途中から作家に転身という経歴を持つ。
平成10年に、銀行の内幕を描いた「果つる底なき」〔この作品もとても面白い!)で「江戸川乱歩賞」を受賞している。この賞は「賞金1千万円」の魅力とともに推理作家の登竜門として有名。過去にも井沢元彦、高橋克彦、東野圭吾といった錚々たる作家たちを輩出している。
池井戸氏はたしか一昨年だったと思うが「直木賞」受賞の最短距離に恵まれたが直前になって選考委員の一人「渡辺淳一」氏が「この作品に賞を与えるなら自分は選考委員を辞退する」と猛反対したため受賞ができなかったというたいへんお気の毒な経緯がある。
実力がある作家なのでそのうち必ず陽の目をみることだろう。」
まあ、以上のとおりだったが見事に我が予想が当った。池井戸氏は後になって、この「下町ロケット」で「直木賞」を受賞されたのはまだ記憶に新しいところ。
そのときは選考委員ではなかった渡辺淳一氏(故人:「失楽園」の著者)が当時なぜ猛烈に反対したのか定かではないが、例によってご当人お得意の過激な描写が池井戸さんの作品には皆無だったことに物足りなさを感じたのかな?(笑)
池井戸さんの作品には絶対といっていいほど男女の絡みのシーンが無いのが特徴で、いい悪いは別にして読後感がいつも健康的で明るくスッキリ爽やかである。
同じ池井戸さんの作品で「半沢直樹シリーズ」も昨年テレビ化され、「やられたらやり返す、倍返しだ!」のフレーズとともに大人気を博したが、そのときの裏方さんたちが今回の「下町ロケット」も手掛けたそうで、たしかに共通点がある。
一番に気付くのはドラマの中の山場のシーンに物凄い効果音が入っていることで、スピーカー(ウェストミンスター)から「ドド~ン」という低音が迸り出るのがとても心地いい。
つい最近のブログで「低音も高音もそこそこ出ていればヨロシ。ポイントは録音現場のプレゼンスで、それが再現できていればいい」と、記載していたところ、このブログの読者の方(千葉県のMさん)から「我が意を得たり」とご賛同のメールをいただき、大変心強い思いをしたところだが、無欲の勝利とでも言うべきか、こういう心境になった途端に凄い低音が出るのだから我がオーディオ人生は何ともはや「パラドックス」に彩られていると言うべきか(笑)。
なぜ、我が家のシステムからこういう低音が出だしたのか、実は思い当たることが一つある。これを書くと長くなるのでいずれ稿を改めて記載することにしよう。