「全家庭、オール電化システム」なんて調子のいいことを言ってた電力会社が、うってかわって「節電にご協力を」と方向転換。
ちょっぴり、いまいましいがまあ天災がらみなので仕方ないとするかな。
オーディオで湯水のように電気を消費している自分も世の趨勢に倣って何か出来るところから手を付けてみようかとしばし一考。
システムの中で一番気になるのが常時電源を入れっぱなしのDAコンバーター「ワディア27ixVer3.0」〔以下、コンバーター)。
ちなみに、言わずもがなだがDAコンバーターとは「デジタル(Digital)からアナログ(Analogue)へ信号を変換(コンバート)する機器のこと。
CDソフトを使用する限りシステムの中の必需品であり、一体型のCDプレーヤーの場合は内蔵してある。
このコンバーターを購入してからもう15年ほど経過し、途中「バージョンアップ」を2回ほど繰り返しているが、性能には十分満足しているものの難点はこのコンバーターには電源の入り切りスイッチがついていないこと。
いかにも電気代を気にしないおおらかなアメリカ製品らしく「常時、休むことなく電源を入れておきなさい」というわけ。
「電気代がもったいないじゃない、なぜ常時電源を?」という問いかけには、次のような模範解答がある。
CSE社の「ゼロクロス・スイッチ」を購入したときの説明書によると、
☆ 電源オンのとき
A/V機器の電源をオンにすると、通常使用状態の数十倍の突入電流が発生する。突入電流はA/V機器の半導体やフィルター・コンデンサーに過大な電流を流し徐々に特性を悪化させる。
☆ 電源オフのとき
A/V機器内臓の電源トランスには自己誘導作用があるため、電源をオフにした瞬間、1000V前後の逆起電力が発生する。A/V機器の故障は90%近くがこの逆起電力によるものと言われ、電源回路や出力回路の半導体が損傷を受けている。
日頃、わたしたちは何気なしにオーディオ機器のスイッチを入れたり、切ったりしているものの、実情はかくの如し。
これでワディア社が自社の製品に電源スイッチを付けようとしないのもよく分かる。
たしかに、これまで15年ほどこのコンバーターを使ってきて電源を切ったことはまずないが、3年ほど前に電源トランスが一度故障しただけで、半導体やコンデンサーの故障は皆無なのが見事に証明している。
そうはいっても「消費電力60W」の機器を24時間ぶっ続けで使うというのもこのご時世では、ちょっとねえ~。つまり60Wの電球を昼夜つけっぱなしと同じこと。
それに冬ならともかく、夏になるとこのコンバーターは筐体にかなりの熱を持ち手を付けられないほどになるのでエアコンの設定温度によろしくない。
そこで、今年は次の対策を講じることにした。
☆ コンバーターの上にアルミの「ヒートシンク」を置き、その上に「保冷材」〔袋入り)を載せて6時間おきに入れ替える。
☆☆ せめて就寝時間はコンバーターを接続しているアイソレーション・レギュレーター「TX200」(CSE社)のスイッチを落とすことにする。
これで節電へ大きく前進というところだが、そうなると、頻繁なスイッチの入り切り(とはいえ一日一回)でこのコンバーターの寿命の方が心配になってきた。
何しろシステムのコントロール・センターの役割を果たしているので、これが故障すると我が家のシステムは一挙に崩壊するのは間違いなし。
CDトランスポート(270)とのクロック・リンクはご破算になるし、デジタル・ボリュームが利用できなくなるので新たにプリアンプを導入しなければならないが、これに見合うプリアンプの存在を見つけるのがたいへん。
使い出して15年以上も経つし、おそらく現在は製造中止でこれに代わる代替品はもう無かろう。もちろん、最新のデジタル技術が網羅された新製品になっているはず。
しかもワディアのことだからおいそれと手が出る価格ではあるまい。現在の自分に現役時代のような馬力を求めるのは「比丘尼に求めるに陽物をもってするようなもの」〔司馬遼太郎「歳月」)だ。
あれこれ考えていると不安になってきて、このコンバーターを購入した東京のショップのSさんに問い合わせてみた。
「バージョン・アップ済みのDAコンバーターのワディア27の中古品はありますかね?スペアで持っておきたいんですけど」
「幸い1台ありますよ。」
このSさんとは古い付き合いで、今年の1月にマークレヴィンソンのプリアンプ「N0.26SL」の購入中止~返品のときも快く応じていただいた方。
保証は万全だし、性能の方はもう分かっているしで、唯一の問題は値段だが15年前に購入したときに比べて何と1/4ほどに下がっていた。
デジタルの世界はいくら日進月歩とはいえスゴイ値下がりに複雑な心境。
何だか苦労して購入した自宅の土地価格が値下がりしたような気分だが、あと1台購入しておけば後顧の憂いはすっかり無くなり、システム維持の上で磐石の体制となる。
「よ~し」と、思い切って購入することにした。
このDAコンバーターは出力電圧を0.4Vから8.45Vまで内部の4つのスイッチの「OPEN/CLOSE」の組み合わせで16段階に切り替えられるようになっており、Sさんに頼んで出荷時の出力をこれまでよりも大きい6.8Vにしてもらった。
半年間の保証付きなのでその間は目一杯使わないと損するとまるで貧乏人根性丸出し。
自宅に到着後すぐにコンバーターを入れ替えて試聴したところ、6.8Vの出力が大きすぎてテレビ視聴の時などボリュームが僅か7/100ほどでうるさいくらい音が大きくなる。
「こりゃ、ダメだ」と工場出荷時の標準「4.26V」へ戻すことにした。
7月31日〔日)の午前中にSさんが同封してくれた筐体の解体方法(底板の10個のネジを外す)と、4種類のスイッチ・セッティング仕様書とをにらめっこしながら、作業に取り掛かって無事終了。思った以上に簡単だった。
中央付近に左右一対あるオレンジ色の部分がボリューム調整箇所で各4つの白いスイッチがあり、それぞれをOPEN側とCLOSE側のどちらかに倒すだけでの組み合わせ。
フ~ッ、これでやっと一段落。
それにしてもとんだ節電騒動で来月の電気代がどのくらい下がるか”見もの”だが、おそらく差引勘定では高くつくことは間違いなし。
しかし、システムの安心料と思えばそれでいいし、最終的に無駄遣いに終わるかどうかは神のみぞ知るところ。