「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

音楽談義~改めて「ジネット・ヌヴー」の魅力を~

2009年12月08日 | 音楽談義

12月4日〔金)に「運転免許の更新」のため久しぶりに大阪から帰ってきた娘。

仕事に忙殺されて大好きな「宝塚歌劇」のブログ更新も出来ない毎日だそうで、「お父さんのブログを読んでるかい?」と訊ねてみると、「最近のブログは何だか難しすぎてよく分からないので読んでいない!」と、素っ気ない返事。

これまで、なるべく話題をバラエティに富むように振り分けているつもりだが、最近「オーディオ」の話を連続4回続けているせいのようで、やはり(「オーディオ」関係の話は)特殊すぎてどうも一般受けしないようだ。

この間、ブログへのアクセス数も”はかばかしく”ないのが実状で娘の意見が大方の傾向を集約していると見ていい。

興味を持って読んでくれる方に幅広く話題を提供し参考にしていただければと乏しい知識を振り回してコツコツと投稿を続けているものの、それかといって、「オーディオ」を抜きにすると、このブログは”ありきたり”の”魂のないヌケ殻”みたいな存在になってしまうので難しいところ。

さてと、今回は久しぶりに気分一新で「音楽」についての話。

「ジネット・ヌヴーの3枚セットがHMVのネットにあるのを知ってる?」とオーディオ仲間のM崎さんから連絡が入ったのが先週の中ごろのこと。

以前、油断してヌヴーの全集を買い損ねてしまい、以後発売されないままなのでいまだに後悔し続けている毎日。早速飛びつくようにネットを見たのはいうまでもない。ヌヴーで検索して「あった、あった!」、それも3枚セットで1,725円という信じられない安さ。

曲目は次のとおり。

CD1  ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」
     シベリウス「ヴァイオリン協奏曲」

CD2  ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」(イッセルシュテット指揮)
     ショーソン「ヴァイオリンと管弦楽のための詩曲」

CD3  リヒャルト・シュトラウス「ヴァイオリン・ソナタ」ほかラベルの小品

因みに現在所持しているヌヴーの演奏はシベリウスを除いてすべてコピー盤。それもパソコン内臓で性能がいまいちのCDドライブでコピーしたもので、いずれきちんとした正規のCD盤を購入しなくてはと思っていたので”渡りに船”のようなもの。すぐに注文した。

同じクラシック音楽でも終生、音質の落ちるコピー盤で済ませても構わない演奏(SPMPTのCD-Rは別!)と、そうでない演奏とが歴然として存在する。もちろんヌヴーの演奏は後者である。

これまでのブログでも再三再四取り上げているこの「ヌヴー」(1919~1949:フランスの女流ヴァイオリニスト)だが、「演奏はいいものの、録音が悪い」盤の典型で、なにぶんにも1940年代と随分昔の録音なので仕方がない

しかし、いまだに彼女の演奏に感銘する人はいつも”感涙に咽ぶ”自分も含めてかなり存在するようだし、何といってもその心酔度が並ではない。

因みに関連ネット情報でもやはり絶賛の嵐。

☆ ヌヴーが30歳で事故死(飛行機墜落)していなかったら1950年代から1970年代にかけてのヴァイオリニストの序列はおろか、ヴァイオリン音楽のあり方も大きく変わっていたかもしれない。

☆ 
ヴァイオリンには女性奏者が多いがハイフェッツやオイストラフに伍する巨星は輩出されていない。ヴァニャフスキ国際コンクールで大差でヌヴー(優勝)に完敗を喫したオイストラフ(第二位)は「悪魔のような才能」と妻宛の手紙に書いた。ヌヴーこそ男勝りの気性で彼らを凌ぐことが出来た筈の唯一のヴァイオリニストだった。

因みに、「音楽とオーディオ」を極めた粋人「五味康祐」氏〔故人)の名著「西方の音」(1969年刊)の中の記述(248頁)に「ヌヴーの急逝以来、僕らは第一級のヴァイオリニストを持たない」
とある。

これは、既にオイストラフ、ハイフェッツが「功なり名を遂げた」頃の話だから驚く。今でこそ、この両者は巨匠の名をほしいままにしているが、当時はそれほどの位置づけではなかったことが推察されるのも興味深い。

彼女の代表作といえば”自分如き”に決め付ける資格はないがブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」を外すわけにはいかないだろう。

ブラームスが親友ヨアヒムのために生涯にたった一曲しか残さなかったヴァイオリン協奏曲で、交響曲といってもよいほどに堅固に組み立てられ堂々とした威容をもち、同時に内省的な心情に溢れた作品。

ヴァイオリニストのスピリットとテクニックが赤裸々に照らし出されて隠しようがないというほどの難曲である。

自宅に届いたのが6日〔日)の午後。娘をJR別府駅に送ったりしてバタバタしたので翌7日〔月)の午前中にじっくりと向き合った。なおブックレットがすべてフランス語(?)で書かれているので輸入盤である。

                       

まず、CD1とCD3は後日の楽しみにしてCD2から試聴。

針音のショックノイズが
目立つのでおそらくLP(SP?)のレコード盤からの復刻だろうが、あまり気にならない。音もこもった感じがせず以前よりも随分と明瞭になった。高域の伸びと左右の広がりを感じさせる響きが、いかにもオーディオナイズされた音を感じさせる。

しかし、全体を聴き終えてハタと困ってしまった。

旧盤の、音が中央に寄った古典的な響きのほうが、いかにも音の厚みを感じさせヴァイオリンの力感を感じさせるのだ。既に充分馴染んだ音なので耳が拒絶反応を起こしているのかもしれない。

しばらく時間が欲しいところだが、今のところはプラス、マイナス総合的に勘案して旧盤に肩を持ちたい感じ~。

とはいえ、精神の高揚を覚える力強い演奏の素晴らしさはそういう細かい”こだわり”を軽く吹き飛ばす勢い。


改めて、「音楽と一体になった比類なき魂の燃焼」(旧盤のライナーノート)という歯が浮くような言葉も納得できる。やはり「ヌヴー」は桁外れのヴァイオリニストであることは間違いなし。
              
          
 


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