・・・・・続き (前のその2はこちら)
アルコール依存症は、別名「否認症」といわれる。「飲んでいない」、「これしか飲んでいない」、「この程度では酔わない」、「俺は大丈夫だ」など、徹底的に否認を続け、現実から逃げる特徴があり、初期介入に失敗するといっそう深みに落としてしまう恐れもある。やはり専門家にいかにつなげるか、そのタイミングを見計らうのが難しい。
治療は、本人だけでなく「イネイブラー」となっている人も必要だと思う。家族がその役割を、多くが果たしている。私は保健所のパンフレットなどを使い、家族とともに「アルコールの勉強会」を開いたこともある。
アルコール依存症への誤解は家族も含め、多くの人が持っている。そもそも「病気」という認識がなく、「だらしない人」、「意思が弱い」、「性格が悪い」などと思う人が多い。
しかし、これは結果であり、もともとは几帳面で真面目な人ほど依存症になると性格が百八十度変わってしまう。そして自己中心的になり、攻撃的、自己憐憫などの性格があらわれてくる。
「病気」は治療が必要です。
アルコール依存症は、「断酒」とともに「断酒会」への参加によって「回復」状態が続く。「治る」ということはなく「回復」が一生続くことによって、ふつうの人になれる。
昨年、釧路市において「全日本断酒連盟第五十一回全国大会」が開かれ、私も参加した。そこでの体験発表は衝撃的であった。家族、家庭が崩壊し、本人も地獄の道を歩んできた方々の集まりであった。
相談活動における問題の根源にアルコール問題が存在する場合は、本人にどのように接近するか悩むところである。酔った状態で何回も相談を受ければ、「共依存」に陥ってしまう。距離感を持つこと、そして「飲んだ場合は相談にのらない、明日しらふになったら何でも話を聞く」というように突き放すことも必要だ。
しかし、なかなか治療機関に結びつかないケースが多い。だから難しい。
依存症のなかでも、特に困難なのは「ギャンブル依存症」だ。アルコールは酔って態度に現れるが、ギャンブルは目に見えない。見えてくるのがお金。その時は、本人や家族の多重債務地獄が待っている。家族崩壊の入り口である。
このお話は、またの機会に・・・
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※厚労省の飲酒量の規定(一日の量)
多量飲酒 ― 純アルコール 60g以上
節度ある飲酒―純アルコール 20g以下
純アルコールをお酒に換算すると
500mlのビール1本 20g
日本酒1合 22g
焼酎35度1合 50g
ワイン一杯120ml 12g
ちなみに成人男性の五%が「多量飲酒」との調査がある。(250万人!)
※イネイブラー
アルコール依存症者の周りに飲み続けることを可能にしている人。さらに失敗の尻拭いをしている人。いわゆる援助と尻拭い。主に家族、親族、友人など。
※依存症
昨年6月(2014年)に厚生労働省が調査した結果は、ギャンブル依存症が536万人、ネット依存症が421万人、アルコール依存症が106万人であった。2003年調査ではアルコール依存症が81万人となっており、増加している。
依存症は、病気であり、治療が必要となっている。
※スリップ
断酒を継続し回復している状態で再飲酒してしまうこと。以前よりいっそう悪化することがある。
※久里浜式アルコール症スクリーニングテスト
日本で最初につくられたアルコール依存症のスクリーニングテスト。個人でもできるのでぜひ!
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以上です。
私は、アルコールには人格があると思っています。依存症に陥ってしまった人の過去を聞くと、かなりの人は真面目で几帳面な性格があります。それが、180度変わってしまい、なぜか同じような性格になってしまう。
自己中心的、相手の立場にたてない、感情を逆なでする、いばる、攻撃する、そして、自己憐憫の感情が強い。
「飲んでない」、「これぐらいでは酔っていない」など、否定やウソも常態化していく。
人格が乗っ取られる、と表現できるのではないか。乗っ取られた人格から、本来の、その人の叫びが聞こえるか、その時がチャンスだと思っている。
依存症は、兄弟姉妹、友人知人も離れていき、家族が崩壊し、孤立化していく。
そして、いっそうアルコールに依存していく悪循環のサイクルに。
このどこかの時点で、ブレーキをかけることが出来れば、依存症への道から引き返せるか、せめて脇道に行けるか、あるはずだ。
いずれにしても、病院や専門家につなげていくことが最優先だと思っている。
「アルコール健康障害対策基本法」が施行されてから、1年となる。
国は「基本計画」の作成とともに、それにもとづいて自治体でも「計画」をつくることになるが、問題は「人と金」である。
釧路では、病院を退院した後のケアが難しい。
本格的にやろうと思えば、やっぱり札幌市に行くしかない。
地方都市でも、入院、退院後のケア、そして自立への道へ、人とお金を集中させる、こうした具体化が急がれる。
それは、他の依存症、ギャンブル、ネット依存などにも共通する課題でもある。
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