若いとき観た映画「ソイレント・グリーン」には
衝撃を受けた記憶がある。
SF映画によく出演するチャールトン・ヘストン
が、刑事として主役を演じている。
人類の未来、人口爆発と環境破壊で食料難の世界
を描いている。金持ちは自然食品や肉を食べてい
るが、庶民はソイレント・グリーンというクッキ
ーのようなものを食べて飢えをしのいでいる。
すさまじい格差と貧困だ。
街では役にたたない浮浪者を巨大なブルトーザー
ですくって集める姿は衝撃だ。
そしてある年齢になると「安楽死」のホームへむ
かう。そこは自然のすばらしさを映し出す巨大ス
クリーンがあり、美しい音楽を聴きながら死を迎
える。
しかし、その裏には恐ろしい秘密が・・・
その秘密を暴いた刑事のチャールトン・ヘストン
の最後の叫び声が記憶に残る。
なぜこのことを思い出したかと言えば、ALS難
病患者への「嘱託殺人」のニュースにふれたから
だ。
犯人の大久保容疑者の露骨な「優生思想」が語ら
れている。
「高齢者を“枯らす”技術」「オレはドクターキリ
コになりたい」「高齢者への医療は社会資源の無
駄」など・・・
ネットには「安楽死」礼賛の書き込みがたくさん
あり、私はゾッとした。
新自由主義の思想が社会を席巻し、「生産性のな
い」ものは「じゃまもの」「迷惑をかける」とい
う有形無形の考えが底流にある。
それが、難病や障がい者、がん患者などを追い込
んでいないのか。
精神科医の香山リカさんは「(容疑者の医師は)
経済最優先の価値観に従って、非常に安易に嘱託
殺人を実行しています。政治にはまず、障害や病
がある方が自らを”お荷物”と感じなくてもよい社
会づくりを目指していただきたいです。医療従事
者としてお願いします」と述べた。(26日付赤旗)
その通りだと思った。
ソイレントグリーンのように、高齢になったら、
役に立たなくなったら、自ら安楽死の「ホーム」
に行くようなことは、あってはならない。
さらに今日は19人もの障害者が刺殺された「相模
原障害者施設殺傷事件」から4年目だ。犯人はあ
からさまな「優生思想」をもっていた。
今回の「嘱託殺人」は、同じにおいがする。
本人も、家族も、負担にならない安心できる環境
・社会をつくってこそではないか。
政治の責任は重い。