生き生き箕面通信

大阪の箕面から政治、経済、環境など「慎ましやかな地球の暮らし」をテーマに、なんとかしましょうと、発信しています。

1352 ・「戦争をなくしたい。伝え続ける人がいなければ」と、山本美香さん

2012-08-22 06:50:08 | 日記
おはようございます。

生き生き箕面通信1352(120822)をお届けします。



・「戦争をなくしたい。伝え続ける人がいなければ」と、山本美香さん



 日本人の女性ジャーナリスト、山本美香さんが8月20日に、シリアの激

戦地アレッポで銃撃戦に巻き込まれ45歳の命を奪われました。山本さん

は「戦争をなくしたい。そのためには現場から現状を伝え続ける人がいな

ければ」と、命がけの取材をしてきました。その烈々たるジャーナリズム

魂に敬意を表するとともに、深い哀悼の意を捧げます。



 「戦争をなくしたい」という強い思いの山本さんは、アフガン、イラク、

チェチェンなど世界の紛争地に飛び込み、とりわけ女性や子どもたち

が犠牲になる現場を伝えてきました。優れた戦場ジャーナリストに贈ら

れる「ボーン・上田記念国際記者賞特別賞」を03年に受賞しています。



 とくに戦争は、弱い立場の人を犠牲にします。それを伝え続けることが

ジャーナリストの使命ですが、その悲惨な現場を知られたくない戦争当

事者は、ジャーナリストを嫌い、自分たちが行っている蛮行が伝えられ

ることを敵視します。今回は、シリア政府軍から狙われたようです。



 第2次大戦後も戦争をずっと継続してきたアメリカは、戦争の悲惨さが

自国民に伝わって厭戦気分が広がらないよう、イラク戦争の時から取材

内容を厳しく規制する従軍エンベット(従軍記者)制を課してきました。つ

まり、アメリカ軍に有利な情報を主とし、アメリカ軍が行った殺戮場面は

掲載禁止するようになりました。



 それを拒否するフリージャーナリストは、危険を承知で最前線におもむ

くのだから、文字通り命がけです。一方、大手のマスメディアは、安全第

一だから最前線には出ず、最も危険な取材はフリージャーナリストと契

約して任せます。大手の企業が下請けを使うようなものです。山本さん

が所属するジャパンプレスは今回も、日本テレビと契約していました。

経費のねん出に苦労するフリージャーナリスト側には、その報酬を取材

経費にあてられるという事情もあります。



 「記者、攻撃対象になる危険」という見出しで、本日8月22日の朝日

新聞朝刊は、「それでも危険を冒して取材をするのはなぜか。虐殺や

人道被害では、現場で記者が取材することが真実にたどりつく限られ

た方法だからだ。それは虐殺を抑止する手だてにもなる。山本さんも

そう信じて現場に向かったのだと思う」というコラムを石合力・中東ア

フリカ総局長の署名入りで2面に掲載しました。



 その朝日新聞も最も危険な最前線に自社の記者は送らず、AFP時

事などの写真を使ってしのぐ方式です。それでも気になるのか、今朝

の紙面でわざわざ、「朝日新聞は危険地域の取材について、本誌記

者に代わってフリージャーナリストに依頼することはない。取材場所や

取材方法を含め、記者を危険地域に派遣するかどうかは独自の判断

で決めている」と33面の末尾に断り書きを入れました。この言い分だと、

朝日は適時判断して危険地域にも積極的に記者を派遣し、真実を伝

えることに努めているように受け取れますが、そんなことは最近数年間

はほとんどなかったのが実態です。朝日新聞の紙面に、アメリカ軍が

行っている虐殺まがいの攻撃などを取材し、掲載しないことが、何より

雄弁に物語っています。



 朝日新聞の記者だった父親はインタビューに答えて、「美香は『戦争ジ

ャーナリスト』ではなく、『ヒューマン・ジャーナリスト』だった」と娘の死を

悼んでいます。美香さんは、「本物のジャーナリスト」と言えるのではな

いでしょうか。