水上陽平の独善雑記

水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・980」

2016-07-21 19:36:42 | Weblog



カルテ番号 ゆ・1(33)

院長は表情を変えることなく言った。
「どういった内容でしょうか?
私はご覧のように、半世捨て人のような生活です。
私に預けても眠ってしまうと思いますよ」
弓削は答えた。
「内容は日本の地震に関することです。
といっても、起こる解析でも予測でもありません。
その逆、起こり難いと思われる地域のデータです」

そして、困ったように言った。
「何故、先生に預けようと思ったのか、は・・・
自分でも、よくわかりません。
先生が表に出たがらないのは、何となくわかります。
考えて言ったのではなく、勝手に口から出てしまいました。
それでも、多分・・・先生に預けるのがいいように思えます」

院長は弓削の顔をじっと見てから言った。
「弓削さん、この先、同じ研究をするつもりですか?」
弓削は、そう問われて、初めて気づいた。
地震学は、ずっとしてきた研究だ。
研究バカの自分は、他の道など考える事もなかった。
それが、どうやら別の道を歩きたがっている。
どうやら意識の底では、研究から離れようとしているようだ。

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・979」

2016-07-20 19:51:20 | Weblog



カルテ番号 ゆ・1(32)

何かを成すには、こだわりは必要。
こだわらないと、次に進めない。
だが、こだわりが重くなる事もある。
視野が狭くなり、目指す処が遠くなる。
あるいは、小さなモノになってしまう。
こだわりつつ、軽く動けるのが理想なのだ。
こだわりはあるが、臨機応変に対応できる軽さ。

昨日の同じ時間に治療院に行った。
院長は笑顔で迎えてくれた。
「お待ちしていました」
「先生とお話しできるのが、楽しみでした。
といっても、昨夜はぐっすり眠ってしまいましたが・・・」
「私も弓削さんとの会話は楽ですよ。
深く言わなくても通じる感覚がありますから」

弓削は幾つも質問があったのだが、ここに来たら消えてしまった。
いや、消えたわけではなく、気にならなくなったのだ。
考えていた事ではなく、口が勝手に話し出した。
「先生、自分がアメリカで個人的に集めたデータがあります。
研究所の仕事ではありませんから、盗んだものではありません。
とはいえ、自分が発表すると契約違反に問われそうです。
急に思いついたのですが、先生に預けます」

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・978」

2016-07-19 20:14:07 | Weblog



カルテ番号 ゆ・1(31)

弓削はその日、近くの旅館に泊まった。
温泉も料理もよかったが、感覚が膜に包まれていた。
夕食後、すぐに布団に入り、眠ってしまった。
翌朝目が覚めるまで、10時間深い眠りだった。
こんな睡眠は、ここ数十年なかった。
起きると、身体が軽いのがわかる。

それまで重かったとは思っていなかった。
手術後も特に体力が落ちたとは思わなかった。
気力も変わらなかった。
それなのに、軽くなってみると判る。
身体も気力も重かったのだ。
それに気づかなかっただけなのだ。

身体や気力だけではない。
弓削は自分を冷静に観た。
おそらく・・・性格も軽くなっている。
研究者は研究対象にこだわる。
こだわらなければ、研究が進まない。
曖昧なまま、次には行けないのだ。
ところが、軽いのだ。
意欲が無くなったのとは違う。
多分・・・楽に研究が続けられると思う。

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・977」

2016-07-18 20:03:56 | Weblog



カルテ番号 ゆ・1(30)

弓削は独り言のように言った。
「生命の長さが重要ではない。
寿命はあるが、期限ということなのか。
生きる為に生きているが、長生きが目的ではない。
変わる事、体験する事、そして・・・方向?」
研究モードに入ったようだ。

院長は黙って弓削の頭を触っている。
やがて、目を瞑った。
そして、そのまま眠ってしまった。
院長は何が可笑しいのか、ニコニコとしていた。
30分後、院長に軽く揺すられて弓削は目が覚めた。
「あ、眠ってしまったようですね」

まだ頭がぼんやりする。
体もだるいが、心地よい。
「一応、約束の時間がきましたので」
「はい、ありがとうございました。
まだ、いろいろお話したいと思います。
明日は、予約できますか?」
「いいですよ。同じ時間でお待ちしています」

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・976」

2016-07-17 19:08:22 | Weblog



カルテ番号 ゆ・1(29)

「生まれて数時間で亡くなる新生児がいます。
生命の寿命は150年でも、その人に宿った時間は僅かです。
それでも、生きていたのです。
既成概念からは、数時間を人生といわないかもしれません。
それでも・・・人生なのですね。
数時間か100年かは、数十年生きた人間の勝手な区別です。
人生という生命が備わった時期に長短を持ち込めないのです。
何故なら、比べることが無意味だからです。

種としての生命の寿命と、個としての人生は別次元です。
個は個なのです。
だからこそ、他が口を挟めない尊厳があります。
どういう死を迎えたか。
どのくらいの長さを生きたか。
本人だけが干渉し、口を挟める事柄でしょう」

弓削が質問した。
「数時間でも、生命があって、その人は変われたのですか?」
院長は即座に言った。
「当たり前です。
100年生きて変われた事と、数時間で変われた事。
個と個ですから、比べる事はできません。
あえていうなら・・・同じかもしれませんね。
つまり、人間の尺度で短いほど濃い変わり方なのかもしれません。
勝手な想像しかできない事柄ですが、変われたのは事実。
生まれて、そして、人生を終えたのですから」

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・975」

2016-07-16 19:53:21 | Weblog



カルテ番号 ゆ・1(28)

長い間、弓削は自殺した友人に心残りがあった。
幾度も、ああすれば、こうだったら、と考えた。
その思いは次第に薄れたとはいえ、消えるものではなかった。
今の院長の言葉で、更に一段と心が軽くなった。
亡くなった人の人生に、口を出すべきではない。
それは、その人を尊重しているからなのだ。
どんな人生であっても、尊重しているからなのだ。

院長の言葉は続く。
「生きているという事実が、とても重要なのですね。
生命は、他の生命と関わり、交じり、時には創造します。
人間の能力では創造はできませんが、生物に備わっている生命なら可能です。
虫でも微生物でも魚でも猫でも、生命があるなら創造できるのです。
勘違いしやすいのですが、生命は人間の能力ではありません。
生命が備わっているから、生きているのです。
そして、生きているから、変わることができます」

弓削は深く考えている。
自分達は、変わらない真実を追いかけた。
真実や真相を解明しようと研究していた。
ところが、人間では解明できない生命の働きがある。
大切なのは、変わらない事ではなく、変わる事。
変わらない事よりも、変わる事が重要だった。
ならば、研究者の姿勢は違う方向かもしれない。

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・974」

2016-07-15 19:53:18 | Weblog



カルテ番号 ゆ・1(27)

弓削には、この話もよく解かる。
研究に社会的な正義や間違いを持ち込むと、研究が歪む。
結果的に、その時の国の為政者の思惑に沿う研究となる。
正しい、間違いを持ち出し、持ち込むのは歪みの元なのだ。
意図しようが、本心から言おうが、正しさを持ち出すと歪む。
本心から正しさを唱える人は、正当を理由に、他を攻撃しやすい。
その大きくなったものを、戦争といい、多くの人を不幸にする。

「自殺は社会的、宗教的に間違いとされます。
生命的には、間違いというよりも逆らっています。
それでも、人の選択としては、間違いではありません。
もちろん、正しいわけでもありません。
ただ、いえる事は、きっと本人は苦しんだのでしょう。
苦しんでいる人に、あなたは間違っている、とは言えません。

生命が消える理由は様々です。
病、事故、自殺、他殺、戦争、突然死などあります。
いかなる理由でも、生命が消えた人の人生は臨終です。
そこに他人が踏み込むべきではないでしょう。
ただし、生きていたなら、接触するのも当たり前です。
生きよう、と応援するのが、当たり前です」

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・973」

2016-07-14 20:03:10 | Weblog



カルテ番号 ゆ・1(26)

弓削は生命について、漠然と考えた事がある。
わからない事ばかりだった。
そこで、この院長ならどう答えるだろうと、質問をしてみた。
「先生は、自殺について、どうお考えですか?
生命が生きる方向で、生物全てに備わっていますね。
それなら、本人の生き方として間違いの行いですか?」
弓削には、自殺した身近な人がいた。

院長は静かに話した。
「私は、単なる事実を言いました。
生命は生きたがって、生きている。
だから、生きる為に生きるのが、生きて行う事です。
正しい道とか間違いの道を言っているのではありません。
当たり前の事実です。
ただし・・・当たり前、当然、自然を実行し続ける人はマレです。
自然体で生きる人は、めったにいません。

自殺は、自ら死を選び、実行する。
生命から観れば、生命に逆らっています。
これも、単なる事実なのです。
生命と混同しがちですが、人の生き方は選択です。
選択に正しい、間違いを持ち込むのは人社会の内部の話です。
正しい、間違いという概念は、流動し逆転し混沌としています。
例えば、戦争時に敵を殺す事は間違いとされないのです」

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・972」

2016-07-13 21:41:33 | Weblog



カルテ番号 ゆ・1(25)

冷静な考えだと思う。
研究者も自分を離れて、冷静でなくては対象が見えない。
思い込みは、二流、三流なのだ。
「何故生きているのか、はわかりません。
ですが、生きて何をするのか、はわかります。
生命を観れば、わかります。
何をするか?
生きとし、生きる。
最後まで、生き切るように生きる、ですね。

生きる為に備わっている生命が中心、核でもあるからです。
人間は人社会で暮らしていますから、社会を意識します。
何の為に生きるか、という質問に社会や国や人間を意識します。
社会の為、国の為、人の為・・・
もっと大きく、冷静になって考えれば、それらは間違いと気づきます。
生きる為に、生きているのです。
だから、病からの回復に意味があるのです」

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・971」

2016-07-13 09:33:32 | Weblog



カルテ番号 ゆ・1(24)

人間と微生物は違う。
何故なら、人間は思考できる、想像ができる。
多くの人はそう思うだろう。
学校でも、同じように教わった。
だが、弓削は研究者だった。
研究者はそれまでの人間の思考が不完全だと証明する事でもある。
院長の言葉は弓削には通じていた。

「微生物の性質や行動は解明できます。
もちろん、まだ知られてない部分もあるでしょう。
でも、何故存在しているのかは・・・答えられません。
人間が微生物の存在さえ答えられないのに、自身の存在など、尚更ですね。
勝手な想像でしかならないわけですね。
それで結構です。
先生の考えを教えて下さい」

院長は少し考えているようだった。
「人は、何故生きているのか?
まず、前提として、その理由が有るのか無いのか?
無いとなると、質問自体が無くなります。
ですから、理由が有る、という仮説からですね。
有るとして、物事は多方面から観る事ができます。
ですが、人は一面からでしか、観る事ができません。
私は私の立場からの観方ですから、たった一面だけです。
いいえ、一面にもならない、一片ですね」

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする