「風間陽水の依頼簿（カルテ）・261」

カルテ番号　と・8（2）

母は言う。
「世の中なんて、そんなものよ。
正義もあるけど、不正義も沢山あるの。
自分で妥協できるところで折り合えばいいのよ」
母はのんびり屋だ。
ニュースで不正があっても、しょうがないわね、と笑っている。
自分には不正が許せないのに、本当に母親なのか？

昔は父も正義感の強い人だったという。
やはり会社で衝突もあったらしい。
だが、会社を辞めたりはしなかった。
今は、不正には黙って耐えているか、諦めているのだろう。
そういう話題はしなくなった。
家庭を持っているのだ、解らなくもない。
だが、自分は独身で両親とは違う。

次の仕事を探しているのだが、最近身体が重く感じる。
身体ではなく、気持ちが重いのかもしれない。
いや、身体もスタミナが無いように感じる。
一応病院で検査を受けたが、特に異常は無かった。
閉じこもるようなことはないが、気力が出てこない。
のんびり屋の母も、さすがに気にしているようだ。

（登場する人物・組織・その他はフィックションです）


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