水上陽平の独善雑記

水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・442」

2015-01-03 19:19:33 | Weblog



カルテ番号 ひ・7(3)

話題になるような山に登るわけではない。
技を競うようなクライマーでもない。
自分を厳しい環境において生きている事に魅かれるのだ。
苦しいのが好きなわけではない。
だが、苦しい立場に魅かれるのだ。
自分でもバカだと思う。
その結果が65歳にもなって、何も無いままなのだ。

妻も子もなく、家もなく、お金も無い。
身体は頑健とはいえ、最近は自分でも衰えを感じている。
そして、相変わらず、山に入り込んでいる。
この先のことを考えようとしても、考えられない。
両親も無く、兄と姉からは勘当扱いになっている。
実家関係の事に45年も手伝わなくなっていたのだ。
出す顔もない。

今年も新年を山で迎えた。
雪山ではないが、寒さ厳しい御来光だった。
だが、何かが違っていた。
光が幾重にも見えたのだ。
太陽の光が、幾つもの輪の光に見えた。
こんなことは初めてだった。

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

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