9月初めのブログで、前山町の「養命の滝」について記し、その入り口付近の道路際に「式部塚」がある事に少し触れたが、この小じんまりした樹林の中に、形の良い庭石サイズの大きな石が3個鎮座している。
大・中・小と別々に注連縄を纏い、それぞれが白石の敷かれた石積み囲い中に、御神石として祀られている。
石の祀ってあるこの樹林は、小学生の頃からここが式部塚だと教えられてきた場所なのだが、実際の「塚」は、この目前の石段を上った地山の上にある、養命神社の境内だとも言われている。
これらの石の由来や、いつの頃からあるのかなどは良く解らないが、庭石や水石を眺めるような感じで、3石共明らかにすぐ前を流れる亀谷郡川(かめたにごがわ)から揚石された、現地性の転石のように思われる。
明治期に記された著名な郷土誌である「伊勢名勝志」(明治22年11月10日 出版、著者 宮内黙蔵)には、度会郡の「古墳」の項に、
和泉式部塚 ~ 前山村字亀谷郡ニ在リ今、林地タリ藤原保昌ノ裔建立スト云フ後、塔ヲ山田吹上町光明寺舊地ニ移セリ 〔宮川夜話〕
とだけ記述されている。
さて、これらの御神石の形状や石質であるが、一番大きな富士山形の尖峰を成す巨石は、石英片岩で、独立して祀られ、サイズは裾の幅が概ね1m、高さは底が地面に埋没しているので1.2 m以上はある。
他の二つは、隣り合わせて祀られており、右側の中サイズの立石形の巨石は、かなり苔むしているが、後述の左側の一番小形の餅を重ねたような、鎧状の平べったい石と同じ岩質である。最大幅は約 70cm、高さは底が少し埋没しているが概ね1m 強である。
3個の内の最小サイズの石は、茶褐色のサビを噴いているが、朝熊山上や朝熊川でよく見る「朝熊石」と同じ石質で、明らかに蛇紋岩化した橄欖岩又は斑糲岩である。外観は段石風の丘陵形を成し、サイズは見かけ上、幅約 60cm、高さは 40 ~ 50cm 程度である。
ちなみに、敷地には子供の遊具である鉄棒や滑り台、ブランコが設置されているが、殆ど遊びに来る子供らはいない。
又、式部塚の事や、鎮座するそれぞれの神石の謂れなどを記した立札等も無い。
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