語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】中原中也「雪の賦」

2015年11月29日 | 詩歌
 雪が降るとこのわたくしには、人生が、
 かなしくもうつくしいものに--
 憂愁にみちたものに、思へるのであつた。

 その雪は、中世の、暗いお城の塀にも降り、
 大高源吾(おほたかげんご)の頃にも降つた・・・・

 幾多(あまた)々々の孤児の手は、
 そのためにかじかんで、
 都会の夕べはそのために十分悲しくあつたのだ。

 ロシアの田舎の別荘の、
 矢来の彼方(かなた)に見る雪は、
 うんざりする程(ほど)永遠で、

 雪の降る日は高貴の夫人も、
 ちつとは愚痴でもあらうと思はれ・・・・

 雪が降るとこのわたくしには、人生が
 かなしくもうつくしいものに--
 憂愁にみちたものに、思へるのであつた。

□中原中也「雪の賦」(『在りし日の歌』(創元社、1938)所収)
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 【参考】
【詩歌】中原中也「冬の長門峡」
【詩歌】中原中也「雪の宵」
【詩歌】中原中也「言葉なき歌」
【詩歌】中原中也「北の海」
【詩歌】中原中也「春日狂想」
【詩歌】中原中也「幸福」
【詩歌】中原中也「朝鮮女」
【詩歌】中原中也「朝の歌」
【詩歌】中原中也「曇天」
【詩歌】中原中也「つみびとの歌 ~阿部六郎に~」
【詩歌】中原中也「夕照」
【詩歌】中原中也「骨」
【詩歌】中原中也「月夜の浜辺」
【詩歌】中原中也「一つのメルヘン」
【詩歌】中原中也「湖上」
【詩歌】中原中也「汚れつちまつた悲しみに・・・・」
【詩歌】中原中也「サーカス」
【詩歌】丸ビル風景 ~正午~

  宮永愛子「なかそら -空中空-」展から
 




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