語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】中原中也「湖上」

2015年07月30日 | 詩歌
 ポッカリ月が出ましたら、
 舟を浮べて出掛けませう。
 波はヒタヒタ打つでせう、
 風も少しはあるでせう。

 沖に出たらば暗いでせう、
 櫂(かい)から滴垂(したた)る水の音は
 昵懇(ちか)しいものに聞こえませう、
 --あなたの言葉の杜切(とぎ)れ間を。

 月は聴き耳立てるでせう、
 すこしは降りても来るでせう、
 われら接唇(くちづけ)する時に
 月は頭上にあるでせう。

 あなたはなほも、語るでせう、
 よしないことや拗言(すねごと)や、
 洩らさず私は聴くでせう、
 --けれど漕ぐ手はやめないで。

 ポッカリ月が出ましたら、
 舟を浮べて出掛けませう、
 波はヒタヒタ打つでせう、
 風も少しはあるでせう。

□中原中也「湖上」(『在りし日の歌』(創元社、1938)所収)
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 【参考】
【詩歌】中原中也「汚れつちまつた悲しみに・・・・」
【詩歌】中原中也「サーカス」
【詩歌】丸ビル風景 ~正午~



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