語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【朝日俳壇抄】帰省の子大人になりて寄りがたし ~10月2日~

2017年10月18日 | 詩歌
【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。

<稲畑汀子選>
 ③旅人として故郷の霧に濡れ (仙台市)三井英二
 ⑦秋天を秋天らしく描く雲 (高松市)白根純子
 【評】(前略)三句目。旅人として訪ねた故郷で、霧が郷愁を抱かせる。

<金子兜太選>
 ③廃校が村の食堂茸飯(きのこめし) (東大阪市)渡辺美智子
 ⑦酒好きと道連れとなる秋遍路 (新座市)五明紀春
 ⑩頑張れる者はがんばり秋の暮 (相馬市)根岸浩一
 【評】(前略)渡辺さん。人の減る村。されどしっかり暮らしあり。十句目根岸氏。さて、何を頑張るか。稲刈りか。

<長谷川櫂選>
 ②帰省の子大人になりて寄りがたし (いわき市)大津日出子
 ⑨春愁と別れ秋思とまた出会ふ (川越市)渡邉隆
 【評】(前略)二席。ちょっとの間にすっかりおとなびて。「寄りがたし」、やがて頼もしさに変わる。(後略)

<大串章選>
 ①水切りの小石届けり天の川 (大村市)小谷一夫
 ②広島の優勝に沸く獺祭忌(だっさいき) (高松市)島田章平
 ③孫抱いて地球儀見つむ彼岸花(羽生市) 小川正志
 ⑤笑ふことありしか母の笑む遺影(別府市)宇都宮克之
 ⑨希(まれ)に聞く虫の音欧州旅情かな(ドイツ)ハルツォーク洋子
 【評】第一句。小さな「小石」と広大な「天の川」の取合せに詩情あり。第二句。広島は九月十八日に優勝決定、翌日大きく報じられた。十九日は獺祭忌。第三句。孫の未来を思いながら地球儀を見ている。「彼岸花」が微妙に効いている。

□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年10月2日)
朝日俳壇
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