秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、
小石ばかりの、河原があつて、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました。
陽といつても、まるで硅石(けいせき)か何かのやうで、
非常な個体の粉末のやうで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもゐるのでした。
さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくつきりとした
影を落としてゐるのでした。
やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもゐなかつた川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました・・・・
□中原中也「一つのメルヘン」(『在りし日の歌』(創元社、1938)所収)
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【参考】
「【詩歌】中原中也「湖上」」
「【詩歌】中原中也「汚れつちまつた悲しみに・・・・」
「【詩歌】中原中也「サーカス」」
「【詩歌】丸ビル風景 ~正午~」
小石ばかりの、河原があつて、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました。
陽といつても、まるで硅石(けいせき)か何かのやうで、
非常な個体の粉末のやうで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもゐるのでした。
さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくつきりとした
影を落としてゐるのでした。
やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもゐなかつた川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました・・・・
□中原中也「一つのメルヘン」(『在りし日の歌』(創元社、1938)所収)
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「【詩歌】中原中也「湖上」」
「【詩歌】中原中也「汚れつちまつた悲しみに・・・・」
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「【詩歌】丸ビル風景 ~正午~」