語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】中原中也「一つのメルヘン」

2015年07月31日 | 詩歌
 秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、
 小石ばかりの、河原があつて、
 それに陽は、さらさらと
 さらさらと射してゐるのでありました。

 陽といつても、まるで硅石(けいせき)か何かのやうで、
 非常な個体の粉末のやうで、
 さればこそ、さらさらと
 かすかな音を立ててもゐるのでした。

 さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
 淡い、それでゐてくつきりとした
 影を落としてゐるのでした。

 やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
 今迄流れてもゐなかつた川床に、水は
 さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました・・・・

□中原中也「一つのメルヘン」(『在りし日の歌』(創元社、1938)所収)
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 【参考】
【詩歌】中原中也「湖上」
【詩歌】中原中也「汚れつちまつた悲しみに・・・・」
【詩歌】中原中也「サーカス」
【詩歌】丸ビル風景 ~正午~


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