語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【朝日俳壇抄】終に来しひとりの暮らし秋刀魚焼く ~10月16日~

2017年10月26日 | 詩歌
【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。

<長谷川櫂選>
 ②朝顔を自由の空へみちびきぬ(相馬市)根岸浩一
 ⑤道元に耳を傾け長き夜を(名古屋市)青島ゆみを
 【評】(前略)二席。「自由の空」とはすばらしい。朝顔にとって、たとえ幻想だとしても。(後略)

<大串章選>
 ①一行の詩となり雁の渡りけり (いわき市)坂本玄々
 ⑤流星や平和を願ふには速し (村上市)鈴木正芳
 ⑥運不運菜を間引きつつ思ひけり (知多市)岩崎光子
 ⑩終に来しひとりの暮らし秋刀魚焼く (一宮市)岩田一男
 【評】第一句。雁の列を「一行の詩」と言ったところにポエムがある。(後略)

<稲畑汀子選>
 ①阿蘇の空閉ぢ込めてゐる芋の露 (神戸市)池田雅かず
 ②懐しや母の御萩(おはぎ)の秋彼岸 (木更津市)本郷政信
 ③千畳の波よせ崩る大夕焼 (西宮市)黒田國義
 ④見えてゐる魚影は釣れぬ根釣かな (浜田市)田中静龍
 【評】一句目。広い阿蘇の空を仰ぐ作者。目の前の芋の葉に結ばれた露の玉。そこに映った大景を発見した感動。二句目。母上の手作りのお萩を懐かしむ心に誘われた秋の彼岸。三句目。どっと寄せてくる大海の波を染める大夕焼を描いて妙。

<金子兜太選>
 ①豊の秋パンツの上にまはしして (大分県日出町)松鷹久子
 ②虫の音が聞こえぬ耳に秋の風 (洲本市)輔老絢子
 ③かぎりなき廃炉の空を鳥渡る (敦賀市)村中聖火
 ⑩手話ひとつ覚えて帰る敬老日(宍粟市)宗平圭司
 【評】松鷹さん。子供たちの草相撲。「豊の秋」は四股名(しこな)か。輔老(すけたけ)さん。肌で感じる秋。豊穣(ほうじょう)の予感。村中さん。原発所在地敦賀。福島の出来事は他人ごとではない。廃炉を。十句目宗平氏。また新しい対話が生まれる期待感。

□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年10月16日)
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