語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】中原中也「サーカス」

2015年07月28日 | 詩歌
 幾時代かがありまして
   茶色い戦争ありました

 幾時代かがありまして
   冬は疾風吹きました

 幾時代かがありまして
   今夜此処での一(ひ)と殷盛(さか)り
     今夜此処での一と殷盛り

 サーカス小屋は高い梁(はり)
   そこに一つのブランコだ
 見えるともないブランコだ

 頭倒(さか)さに手を垂れて
   汚れ木綿の屋蓋(やね)のもと
 ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

 それの近くの白い灯が
   安値(やす)いリボンと息を吐き

 観客様はみな鰯
   咽喉(のんど)が鳴ります牡蠣殻(かきがら)と
 ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

      屋外(やぐわい)は真ッ闇(くら) 闇(くら)の闇(くら)
      夜は劫々(こふこふ)と更けまする
      落下傘奴(らくかがさめ)のノスタルヂアと
      ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

□中原中也「サーカス」(『山羊の歌』(文圃堂、1934)所収)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【詩歌】丸ビル風景 ~正午~


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【詩歌】岩田宏「海底の騎士」 | トップ | 【詩歌】中原中也「汚れつち... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

詩歌」カテゴリの最新記事