語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【ブラック企業】大賞2015 ~セブンイレブンの何が問題なのか~

2015年12月16日 | 社会
 (1)(株)セブン-イレブン・ジャパンの受賞理由は、
   「全国のセブン加盟店の見切り販売を妨害した」
ことなど。

 (2)その反応・・・・
  (a)受賞と同時に親会社のセブン&アイ・ホールディングスの株価が200円以上も暴落し、ヤフー株式掲示板には「セブン&アイは投資先にふさわしくない」などの書き込みが殺到。衝撃の大きさを示した。
  (b)当事者であるセブン加盟店主(オーナー)たちは、「やっと貰ったか」。
  (c)一般の人は、「えっ、なぜセブンが!」。
  (d)メディアの反応はわかりやすかった。
   ①「スポーツ報知」・・・・発表直後の16時20分ごろ、ヤフーニュースに配信。トップニュースとなった。しかし、20分後に削除され、関係者を唖然とさせた。
   ②過去に「ワタミフードサービス」や「ヤマダ電機」のブラック企業大賞を報じたスポーツ紙や夕刊紙も、広告大スポンサーで新聞や雑誌の販売店でもある「天下のセブン」だけに完全沈黙。
   ③「日本経済新聞」2015年11月27日付け・・・・働きやすい優良企業というブラックとの真逆の「ホワイト企業」のお墨付きを与える記事が掲載された。「ブラック大賞を見越した“解毒剤”か」とネットユーザーは失笑した。

 (3)厚生労働省もブラックの疑いのある企業に立ち入り調査したり、学生のブラックバイトの実態を公表するなど、いまや世を挙げてブラック退治の方向にある。
 ブラック企業大賞実行委員会は、今回の受賞理由を
   「セブン-イレブン・ジャパンは、利益至上主義に走り、加盟店の見切り販売(弁当・おにぎりなど消費期限前の値下げ販売)を妨害して利益を搾取している。この結果、加盟店に十分な利益配分がなく、ブラックバイトを生み出す原因になっている」
と説明。フランチャイズ(セブン側とオーナーとは別組織で一つの利益を分け合う関係)の仕組みを使った、今までにない、大規模、かつ、悪質なケースと判断した。
 岡山県労働委員会が、2014年に「加盟店主は労働組合法上の労働者で、その労組のコンビニ加盟店ユニオンとの団体交渉に応じよ」と命じたが、セブン側は不服として中央労働委員会に再審査を申し立てた。この団交に応じなかった不当労働行為も受賞理由だった。

 (4)実行委員会関係者によると、セブンイレブンは4年前から大賞候補の下馬評にあがっていた。だが、フランチャイズという外部から検証できない特殊なビジネスであることから、評価が分かれていた。
 2009年、公正取引委員会が「見切り妨害は独占禁止法違反の優越的地位の乱用だ」と断定し、社会の風向きが変わった。これを受けて全国のオーナーたちがセブン本部を集団提訴し、最高裁判所から有罪判決が出た。今回はこれが後押しになった。
 関係者によれば、公正性から裁判所の判決とか行政命令とか、公的機関のお墨付きが出ないと取り上げにくい。岡山労働委の裁定が出たときも候補にのぼったが、団交拒否なんてほかにも実例があると見送られた。今年、見切り販売妨害に係る最高裁判決が出たことで、加盟店の利益を搾取していることが理解され、大賞選考の最終段階ですんなり決まった。

 (5)セブンイレブンのブラック性は、見切り販売妨害だけではない。
 最悪のものが、「ドミネント」だ。近隣への集中出店だ。商圏内にライバル店を出すやり方だ。セブン側は、「近くには出店しない」「出店のときは相談する」などと言いながら、抜き打ち出店をするのだ。騙し討ちだ。これも利益至上主義の計略だ。
 ドミネントにより追い込まれた自殺、過労死、自己破産、離婚などが後を絶たない。

 (6)見切り販売の妨害、不当労働行為は現在も平然と行われている。
 <例1>福岡市内で32年間セブン店を経営してきた赤川昌春・元オーナー(脱サラ)などは、ドミナントで売り上げが激減し、最後の手段として見切り販売に踏み切ったら、2014年3月いっぱいで契約解除になった(強制閉店・失職)。そのとき、「自己都合による閉店」という念書まで書かされた。むろん、これは裁判対策だ。
 <例2>池原匠美・「コンビニ加盟店ユニオン」執行委員長が、いま審議中の中央労働委員会でセブンイレブン商法を否定したという理由で契約更新の拒絶を言い渡された。これこそ憲法で保障された団結権の侵害であり、労働組合への弾圧である不当労働行為の最たるものだ。
 さすがに、池原委員長の契約問題はユニオン側弁護団の猛反対によってセブン側弁護士が中労委の席で謝罪・撤回した(まだ予断を許さない)。
 これが普通の加盟店なら、<例1>と同様、曖昧な理由でポイ捨てだろう。これがセブンイレブンのブラック企業たるゆえんだ。

 (7)このたびのブラック企業大賞で苦しい立場になるのが、年中無休24時間を切り回すオーナーだ。
 バイト従業員が来なくなるからだ。「ワタミ」がそうだった。ふつう、ブラック企業に勤めようとは思わない。
 24時間店というだけでも、ブラックの条件を十分満たしている。なぜなら、全国のセブン店は、鈴木敏文・会長の大号令下、「新店1,700店」という狂気じみたドミナントの犠牲になり、売上激減とバイト不足の二重苦で瀬死状態だからだ。

 (8)セブンイレブンのこの5年間のドミナントは凄まじい。新店の開業状況は、
   2011年 1,201店
   2012年 1,354店
   2013年 1,579店
   2014年 1,602店
   2015年 1,700店(予想)
 10年前まで年最高630店のペースだったが、今やその2.5倍だ。それでも鈴木会長は「コンビニは飽和状態ではない」と言い張っている。
 2016年には、全国のコンビニ数は6万店を超し、“共食い地獄”に陥るだろう。
 かくて鈴木会長は、かかる「ブラックモンスター企業」を作り、加盟店主たちの生き血を吸い続けるのだ。 

□渡辺仁「セブンイレブンの何が問題なのか ブラック企業大賞2015受賞記念」(「週刊金曜日」2015年12月11日号)
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 【参考】
【ブラック企業】大賞2015ノミネート ~セブン-イレブンなど6社~
【ブラック企業】の没落 ~改善策なき「ワタミ」の絶対絶命~
【ブラック企業】ブラックバイト対策を ~恵方巻きにセブンが販売ノルマ~
【ブラック企業】大賞2014 ~(株)ヤマダ電機が2冠を獲得~
【ブラック企業】大賞2014 ~候補決定~
【ブラック企業】を残業代ゼロが促進 ~竹中平蔵パソナ会長向け成長戦略~
【ブラック企業】対策プロジェクトが成功した要因 ~社会運動と言説~
【ブラック企業】連帯の極小サイクル ~社会の底でせめぎ合う情念~
【ブラック企業】の定義は社会運動がつくりあげた ~言説~
【【ブラック企業】が社会問題として認知されるまで ~社会運動~
【ブラック企業】赤字49億円! 「瀬死」のワタミから人もカネも消えた
【ブラック企業】奨学金という貧困ビジネス ~学生の苦難(3)~
【ブラック企業】全身就活 ~学生の苦難(2)~
【ブラック企業】ブラックバイト ~学生の苦難(1)~
【ブラック企業】激変する若年労働者市場 ~労使間の話し合いが不可欠 ~
【ブラック企業】調査対象の8割で違法行為 ~厚労省初「ブラック企調査」~
【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~
【ブラック企業】対策講座 ~就活~
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~
【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~
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【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
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