<それでは安倍はいつ決断したのか。(中略)
(安倍を)一気に臨時国会召集日の9月28日の冒頭解散に駆り立てたのは「山尾ショック」だ。
一時は9月1日の民進党代表選で誕生した前原誠司新体制の幹事長に内定した元政調会長の山尾志桜里。ところが、「民進党の救世主」とみられていた山尾の若手弁護士とのスキャンダルが発覚した。山尾は一転して離党に追い込まれる。9月7日夜のことだった。これをきっかけに安倍が動く。自民党選対幹部に電話を入れた。
「詳細な選挙情勢調査をやってもらいたい」>
<一方、安倍は翌11日昼、連立与党のパートナーである公明党代表の山口那津男と首相官邸で会談する。翌12日から山口がロシアを訪問するため、その直前に解散を検討していることを伝えるのが目的だった。この会談を受けて公明党の支持母体である創価学会が全国に指令を発した。
週末の16日土曜日、創価学会は全国13ブロックに分けた「方面長会議」を緊急招集した。14年の衆院解散前と同じ手順が踏まれた。>
<「9月28日解散、10月10日公示、22日投開票」
まさしく「初めにスケジュールありき」。トランプの来日日程から逆算して決まった。11月5日に新内閣でトランプを迎えるには、22日投開票がぎりぎりのタイムリミット。首相指名選挙を行うための特別国会を召集するには最短でも10日が必要だからだ。現に安倍は過去2回の衆院選挙後の特別国会を10日後に召集している。一部に報じられた29日投票ではトランプの来日には間に合わない。>
<ただし、この選挙日程は大きな「北朝鮮リスク」を伴う。10月10日は朝鮮労働党の創設記念日。北朝鮮が最初の核実験を行ったのは06年10月9日。創設記念日の前日だった。10月18日には中国共産党大会が開かれる。北朝鮮は昨年9月に北京で開かれたG20首脳会議以来、中国の国家主席、習近平の晴れ舞台を狙うかのように弾道ミサイルの発射などの挑発行為を繰り返してきた。
次期衆院選挙の最中に北朝鮮が何もせずにやり過ごすだろうか。ましてや国連総会に出席したトランプが行った9月19日の演説はこれまでにない激越なものだった。>
<「(韓国の首都)ソウルを重大な危険にさらさずに、北朝鮮に軍事力を行使する選択肢はある」
過激な演説に北朝鮮が強く反発するのは避けられまい。衆院選挙中に北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、Jアラートが鳴るような事態になった場合に選挙戦はどうなるのか。
「少なくともNSC(国家安全保障会議)メンバーは選挙遊説のために首都圏を出ることはできない」
首相の安倍を筆頭に菅、外相の河野太郎、防衛相の小野寺五典らの全国遊説がなくなる異例の選挙戦になるのは確実だ。それどころか米朝の不測の事態にどう備えるかというこれまで経験したことがない衆院選挙になるのは確実だ。にもかかわらず、あえて解散に踏み切るのは、今以上に北朝鮮の危機が忍び寄るからだという。
「国連の北朝鮮制裁の効果が出てくる年末から年明けにかけ、緊張がピークを迎える。そうなれば解散ができるタイミングはほとんどなくなる」(政府高官)
安倍の思惑通り奇襲が奏功するかどうか。前代未聞の「トランプ選挙」の幕が上がる。>
□後藤謙次「前代未聞の「トランプ解散」へ/日程に伴う大きな北朝鮮リスク ~永田町ライブ!No.357」(「週刊ダイヤモンド」2017年9月30日号)から一部引用
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【後藤謙次】再々改造は権力構造を変える ~事実上の「古賀・菅連合内閣」~」
「【後藤謙次】急浮上する電撃解散説 ~ダブル補選と内閣支持率急落の絡み合い~」
「【後藤謙次】反自民の受け皿になれないし、小池知事との連携も困難 ~民進党~」
「【後藤謙次】内閣改造は「専守防衛」でも活路が見えない「守りの安倍」」
「【後藤謙次】経世会(額賀派)・宏池会(岸田派)・石田茂 ~都議選大惨敗後の動き~」
「【後藤謙次】安倍首相の改憲案の前倒し発言 ~「年内解散」に向けた思惑~」
「【後藤謙次】支持率急落で首相が「反省の弁」 ~それでも止まらぬ内部文書流出~」
「【後藤謙次】憲法改正発議までの長い道のりが賭のリスクに ~天皇退位・総裁選・衆院選~ 」
「【後藤謙次】【加計学園疑惑】沈黙していた政官双方から異論 ~加計学園問題が招く想定外反応~」
「【後藤謙次】共謀罪に加計学園問題まで炎上 ~予想以上に高い「6月の壁」~」
「【後藤謙次】安倍1強時代を揺るがすリスク ~森友学園問題で一躍「渦中の人」~」
「【後藤謙次】北朝鮮、金正男氏殺害の深層 ~日本政府内に異なる二つの見方~」
「【後藤謙次】政府与党内の二つの見方 ~北方領土交渉は頓挫?~」
「【後藤謙次】トランプの地滑り的勝利で始まった未知なる対米外交」
「【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク」
「【後藤謙次】幹事長の入院が人事に波及、「ポスト安倍」めぐり早くも火花」
「【後藤謙次】参院選大勝も激戦12県で大敗 ~劣る「勝利の質」~」
「【後藤謙次】都知事選で与党分裂の理由 ~自民党内の反安倍勢力~」
「【後藤謙次】日本が直面する「ABCリスク」 ~英EU離脱で顕在化~」
「【後藤謙次】甘利大臣辞任をめぐる二つのなぜ ~後任人事と直後のマイナス金利~」
「【政治】不可解な時期に石破派が発足 ~その行方は内閣改造で~」
「【政治】震災後2度目の統一地方選 ~異例なほど注力する自民党本部~」
「【政治】安倍が描いた解散戦略の全内幕 ~周到な準備~」
「【政治】安部政権の危機管理能力の低さ ~土砂災害・火山噴火~」
「【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~」
「【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~」
「【政治】石原発言から透ける政権の慢心 ~制止役不在の危うさ~」
「【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~」
「【政治】「新党」結成目前の小沢一郎の前にたちはだかる難問」
「【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~」
「【政治】国会議員はヤジの質も落ちた」
(安倍を)一気に臨時国会召集日の9月28日の冒頭解散に駆り立てたのは「山尾ショック」だ。
一時は9月1日の民進党代表選で誕生した前原誠司新体制の幹事長に内定した元政調会長の山尾志桜里。ところが、「民進党の救世主」とみられていた山尾の若手弁護士とのスキャンダルが発覚した。山尾は一転して離党に追い込まれる。9月7日夜のことだった。これをきっかけに安倍が動く。自民党選対幹部に電話を入れた。
「詳細な選挙情勢調査をやってもらいたい」>
<一方、安倍は翌11日昼、連立与党のパートナーである公明党代表の山口那津男と首相官邸で会談する。翌12日から山口がロシアを訪問するため、その直前に解散を検討していることを伝えるのが目的だった。この会談を受けて公明党の支持母体である創価学会が全国に指令を発した。
週末の16日土曜日、創価学会は全国13ブロックに分けた「方面長会議」を緊急招集した。14年の衆院解散前と同じ手順が踏まれた。>
<「9月28日解散、10月10日公示、22日投開票」
まさしく「初めにスケジュールありき」。トランプの来日日程から逆算して決まった。11月5日に新内閣でトランプを迎えるには、22日投開票がぎりぎりのタイムリミット。首相指名選挙を行うための特別国会を召集するには最短でも10日が必要だからだ。現に安倍は過去2回の衆院選挙後の特別国会を10日後に召集している。一部に報じられた29日投票ではトランプの来日には間に合わない。>
<ただし、この選挙日程は大きな「北朝鮮リスク」を伴う。10月10日は朝鮮労働党の創設記念日。北朝鮮が最初の核実験を行ったのは06年10月9日。創設記念日の前日だった。10月18日には中国共産党大会が開かれる。北朝鮮は昨年9月に北京で開かれたG20首脳会議以来、中国の国家主席、習近平の晴れ舞台を狙うかのように弾道ミサイルの発射などの挑発行為を繰り返してきた。
次期衆院選挙の最中に北朝鮮が何もせずにやり過ごすだろうか。ましてや国連総会に出席したトランプが行った9月19日の演説はこれまでにない激越なものだった。>
<「(韓国の首都)ソウルを重大な危険にさらさずに、北朝鮮に軍事力を行使する選択肢はある」
過激な演説に北朝鮮が強く反発するのは避けられまい。衆院選挙中に北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、Jアラートが鳴るような事態になった場合に選挙戦はどうなるのか。
「少なくともNSC(国家安全保障会議)メンバーは選挙遊説のために首都圏を出ることはできない」
首相の安倍を筆頭に菅、外相の河野太郎、防衛相の小野寺五典らの全国遊説がなくなる異例の選挙戦になるのは確実だ。それどころか米朝の不測の事態にどう備えるかというこれまで経験したことがない衆院選挙になるのは確実だ。にもかかわらず、あえて解散に踏み切るのは、今以上に北朝鮮の危機が忍び寄るからだという。
「国連の北朝鮮制裁の効果が出てくる年末から年明けにかけ、緊張がピークを迎える。そうなれば解散ができるタイミングはほとんどなくなる」(政府高官)
安倍の思惑通り奇襲が奏功するかどうか。前代未聞の「トランプ選挙」の幕が上がる。>
□後藤謙次「前代未聞の「トランプ解散」へ/日程に伴う大きな北朝鮮リスク ~永田町ライブ!No.357」(「週刊ダイヤモンド」2017年9月30日号)から一部引用
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【参考】
「【後藤謙次】再々改造は権力構造を変える ~事実上の「古賀・菅連合内閣」~」
「【後藤謙次】急浮上する電撃解散説 ~ダブル補選と内閣支持率急落の絡み合い~」
「【後藤謙次】反自民の受け皿になれないし、小池知事との連携も困難 ~民進党~」
「【後藤謙次】内閣改造は「専守防衛」でも活路が見えない「守りの安倍」」
「【後藤謙次】経世会(額賀派)・宏池会(岸田派)・石田茂 ~都議選大惨敗後の動き~」
「【後藤謙次】安倍首相の改憲案の前倒し発言 ~「年内解散」に向けた思惑~」
「【後藤謙次】支持率急落で首相が「反省の弁」 ~それでも止まらぬ内部文書流出~」
「【後藤謙次】憲法改正発議までの長い道のりが賭のリスクに ~天皇退位・総裁選・衆院選~ 」
「【後藤謙次】【加計学園疑惑】沈黙していた政官双方から異論 ~加計学園問題が招く想定外反応~」
「【後藤謙次】共謀罪に加計学園問題まで炎上 ~予想以上に高い「6月の壁」~」
「【後藤謙次】安倍1強時代を揺るがすリスク ~森友学園問題で一躍「渦中の人」~」
「【後藤謙次】北朝鮮、金正男氏殺害の深層 ~日本政府内に異なる二つの見方~」
「【後藤謙次】政府与党内の二つの見方 ~北方領土交渉は頓挫?~」
「【後藤謙次】トランプの地滑り的勝利で始まった未知なる対米外交」
「【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク」
「【後藤謙次】幹事長の入院が人事に波及、「ポスト安倍」めぐり早くも火花」
「【後藤謙次】参院選大勝も激戦12県で大敗 ~劣る「勝利の質」~」
「【後藤謙次】都知事選で与党分裂の理由 ~自民党内の反安倍勢力~」
「【後藤謙次】日本が直面する「ABCリスク」 ~英EU離脱で顕在化~」
「【後藤謙次】甘利大臣辞任をめぐる二つのなぜ ~後任人事と直後のマイナス金利~」
「【政治】不可解な時期に石破派が発足 ~その行方は内閣改造で~」
「【政治】震災後2度目の統一地方選 ~異例なほど注力する自民党本部~」
「【政治】安倍が描いた解散戦略の全内幕 ~周到な準備~」
「【政治】安部政権の危機管理能力の低さ ~土砂災害・火山噴火~」
「【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~」
「【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~」
「【政治】石原発言から透ける政権の慢心 ~制止役不在の危うさ~」
「【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~」
「【政治】「新党」結成目前の小沢一郎の前にたちはだかる難問」
「【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~」
「【政治】国会議員はヤジの質も落ちた」