語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【政治】震災後2度目の統一地方選 ~異例なほど注力する自民党本部~

2015年03月17日 | 社会
 (1)3・11における死者は15,891人だ。
 あれから4年。復興を実感させるのは仙台ぐらいだ。今なお24万人が仮設住宅での生活を余儀なくされている。
 しかも、4年の歳月が新たな問題を生み始めている。政府や地元自治体が立てた復興計画と地元住民のニーズが合わなくなっているのだ。
 被災した居住地への帰還希望者が激減している、という調査結果もある。被災直後に求められた「衣・食・住」から「医・職・住」への変化が起きているためだ。
 
 (2)安倍晋三・首相は、3月10日、震災満4年に際して行った記者会見で語った。「心の復興に一層力を入れ、なりわいの復興も加速していく」
 だが、その復興策を裏付ける具体的な青写真は見えない。財源の裏付けも明確でない。
 被災地では、大震災が過去のものとなる「風化」と、原発事故に端を発した「風評被害」という二つの「風」に直面したまま時間が止まっている。
 自民党は3・11を「東日本大震災の日」とするよう野党側に働きかけているが、福島県出身の荒井広幸・新党改革代表は強く反発する。「われわれの被害は現に進行中である。記念日的なものは何の意味もない。忘れたくても忘れられないのが3・11だ」
 「風化」が進行しているのは、東北よりむしろ永田町かもしれない。

 (3)3・11以降、わずか4年間に国政選挙が3回実施され、3人の首相が登場、加えて政権も民主党から自民党へ移行した。これでは一貫した復興策が進まないのも当然だ。
 ましてや2012年の衆院選では119人の自民党衆議院議員が新たに誕生し、このうち2回生になったのが107人。いわば政治の内部構造も激変したのが、この4年間だった。 
 そして、4年を経てめぐってきたのが統一地方選だ。

 (4)4年前の統一地方選は、大震災と重なったから、印象が薄い。
 ただし、3・11当日にはドラマがあった。大きな揺れが起きる1時間前、石原慎太郎・知事が東京都議会の本会議で自分の去就を明らかにした。4選をめざして出馬すると。
 石原は圧勝した。彼に限らず、このときの統一地方選は大震災直後という時代の空気を反映したのか、変化より安定が優先され、現職組が圧倒的に強かった。
 それから4年。こんどは地方の変革による「地方創生」が叫ばれる中で地方政治の代表が選ばれることになる。
 すでに昨年、原発の再稼働が争点になった滋賀(7月)や、米軍基地をめぐる沖縄、農協改革が争われた佐賀の3県知事選で与党(自公)の推薦候補が敗退している。
 「1強」と言われながら、地方には政権に対する不満が潜在的に存在する。
 さらに、通常国会閉会後は、政権の安定感が失われつつあるやに見受けられる。西川公也・前農林水産相の辞任に始まり、複数の閣僚が「政治とカネ」問題で窮地に立つ。
 西川の辞任の日に、中川郁子・農水政務官と門博文・自民党衆議院議員のお粗末なスキャンダルが週刊誌に掲載された。
 
 (5)政権の緩みが随所に顔をのぞかせる。安倍自身が衆院予算委員会で民主党の質問者へ野次を飛ばす様子がテレビで生中継された。
 そんな中で迎える統一地方選。
 4年前は石原が任期途中で国政に転じた。今回は、そういった目玉となる選挙がない。盛り上がりに欠ける。だが、来年の参議院選を見据えて、全国各地の政治的地殻変動を探る上で、極めて重要な意味を持つ。参院選の前哨となるのが、今回の地方選だ。
 知事選は、北海道を始め、10都道府県。
 このうち与野党対決型は北海道、奈良、大分の3府県。
 また与野党の政治情勢の党勢を占う上で、重要な指標となるのが41の都道府県県議選だ。
 このうち12都道府県で過半数割れしている。
 被災地を含む地方の有権者は安倍政権をどう見ているか。 
 統一地方選は、そのリトマス試験紙である。

□後藤謙次「震災後2度目の統一地方選に自民党本部は異例なほど注力 ~永田町ライブ!No.234」(「週刊ダイヤモンド」2012年7月7日号)に拠る。
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