語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【中国】【食】リスクは爆食にとどまらず ~農産物版「AIIB」構想~

2015年08月26日 | 社会
 (1)大豆、トウモロコシ、小麦・・・・中国の穀物輸入量が激増している。
 食生活レベルが向上し、1人当たりの消費量は増える一方だ。
 むろん、中国国内での穀物生産も増やしてるのだが、消費の伸びに追いつかない。
 大豆油など、直接人が消費する分のほか、食肉や卵の生産に当たり「エサ」としての穀物も不可欠だ。

 (2)中国が食糧獲得に奔走する「爆買い」が、世界の食料市場を揺さぶる。こうした中、新たな攪乱要因が浮上してきた。
 食農の分野でも、穀物メジャーが加工・物流工程を中国へシフトさせる、など、中国が「世界の食品工場」の集積地帯となりつつある。
 すると、中国は世界の食の「輸出基地」の役割を果たすことになる。世界中の食料が中国を経由して消費地に届くわけだ。この結果、これまで以上に、中国が世界の食料覇権を握ることになる。
 
 (3)中長期的な中国リスク。
 「購買力のさらなる拡大で、中国の判断で食料相場を動かせるようになる」【柴田明夫・「資源・食料問題研究所」代表】
 <例>中国の内需が急拡大すれば輸出向けは絞られ、価格は高騰する。逆に、需給がだぶつけば、安価な食料が近隣のアジアに流入し、食料市場が混乱する。いま、鉄鋼業界で中国製品がアジアに大量流入し、相場が暴落しているように。

 (4)食の輸出拠点化は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の農産物版のようなもの。アジアで食の主導権を握ろうとしている。【柴田代表】
 <前例>中国は、2000年ごろ、国内の養豚業を育て、アジアの豚肉の輸出拠点になることを目指した。しかし、想定以上に内需が伸びたため、頓挫した。

 (5)中国リスクをすでに痛感している日系メーカーもある。大豆から植物油を作る製油業界だ。
 かつて日本は世界一の大豆輸入国だった。しかし、その座は中国に譲った。いまや、中国の輸入量は日本の25倍、7,200トンに上る。
 1990年代半ば以降、米カーギルなどの穀物メジャーや地場メーカーが中国に競って搾油工場を建設。いまや搾油能力は大豆換算で1億トン以上だ(供給過剰)。
 困ったのは日系製油会社だ。搾油工程の利益率は、大豆の搾りかす(「大豆ミール」)で決まる。ところが、「中国が大豆ミールのダンピング輸出を仕掛けてきた。われわれは食い扶持を失った」【日系製油会社】。
 中国産大豆ミールの流入で、日系メーカーがジリ貧となっただけはでない。日本の畜産業で使われる家畜のタンパク源も、中国に依存することになった。大豆ミールは代替品がなく、畜産業の持続性も脅かされている。

 (6)膨張する中国勢。日本はベトナムとの連携で中国リスクの回避に動く。
 アジア全域で繰り広げられる「食農」争奪戦は、今後ますます、確実に激化していく。 

□記事「爆食にとどまらぬ中国リスク 農産物版「AIIB」構想」(「週刊ダイヤモンド」2015年8月29日号)
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