TOP PAGE BLOG ENGLISH CONTACT




消えた「原発ゼロ」 むしろ「重要電源」に

  • 文 保坂展人
  • 2013年12月17日

写真:「エネルギー基本計画原案」が示された9日後に開かれた「脱原発をめざす首長会議」

「エネルギー基本計画原案」が示された9日後に開かれた「脱原発をめざす首長会議」

  

「原発ゼロ」が消えました。

 特定秘密保護法で大揺れになった永田町近辺の嵐の空白を突くようにして、政府は12月6日、「原発は重要なベース電源」と位置づける「エネルギー基本計画原案」を提示しました。

<電源としての原子力について「安定供給、コスト低減、温暖化対策の観点から引き続き活用していく重要なベース電源(基礎的電力)」と位置づけ、「原子力規制委員会によって安全性が確認された原発は再稼働を推進」と明記した>(ロイター通信

 経済産業省・総合資源エネルギー調査会・基本計画分科会はこの原案に「基盤となる」という文言を付け加え、原発は「基盤となる重要なベース電源」とされました。

 前政権が「国民的議論」やパブリックコメントをへて、「2030年代までに原発稼働ゼロ」を打ち出した「革新的エネルギー・環境戦略」は否定され、ふたたび原発依存へと大きく舵を切ったのです。

 原子力規制委員会によって安全性が確認された原発の再稼働だけでなく、将来にわたる原発への依存度について「必要とされる規模を確保する」として、「原発新設」にさえ含みをもたせています。

 朝日新聞社の6月の世論調査では、経済成長のために原発を積極的に利用する方針の是非を聞いたところ、反対(59%)が賛成(27%)を上回りました。また、「再稼働」についても、朝日新聞社、共同通信社などの調査で反対が半数を超えています。多くの人々はいまだに「原発の安全性」に疑問を抱いています。

 そもそも、昨年夏、エネルギー戦略について9万件近く寄せられたパブリックコメントの87%が「原発ゼロ」シナリオを支持していました。このほか、さまざまな形で吸い上げられた国民の意見を反映してできたのが、「革新的エネルギー・環境戦略」での「2030年代での原発稼働ゼロ」という方向性だったはずです。

「エネルギー基本計画原案」が示された9日後、「脱原発をめざす首長会議」の勉強会が東京・品川で開かれ、約20人の首長が参加しました。ドイツにおける再生可能エネルギーの地域における活用方法などについての報告を聞いた後、今回の「エネルギー基本政策」で「原発を基盤となる重要なベース電源」としたことに反対する決議を採択しました。

<私たちが指摘しなければならないのは、今回のエネルギー計画の策定が「国民的議論」を無視した形で進められ、異常なプロセスをとっていることである。(中略)私たちは住民の生命・財産を守るという首長の責務を果たすために、新しいエネルギー基本計画において原子力発電を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけることに強く反対する。同時に、政府の責任において、一刻も早く「原発ゼロ」への確かな道筋を示すことを改めて求めるものである>(「脱原発をめざす首長会議」の決議より)

 この首長会議は12年1月に結成され、現在、全国の区市町村長70人・元首長22人の92人が参加する横断的なネットワークです。北海道から鹿児島まで、原発立地県や隣接県から多くの首長が参加しています。首長会議の目的は、次の通りです。

 ・脱原発をめざす首長会議は住民の生命・財産を守る首長の責務を自覚し、安全な社会を実現するため原子力発電所をなくすことを目的とする。
 ・脱原発社会のために以下の方向性をめざす。
 (1)新しい原発は作らない
 (2)できるだけ早期に原発をゼロにするという方向性を持ち、他方面へ働きかける

 このように首長会議が「異議あり」の声をあげたことは、あまり大きく報道されていませんが、小泉元首相が「原発ゼロ論」を打ち出す前から、国のエネルギー戦略の大きな転換を訴えてきました。

 新潟県の泉田裕彦知事が、再稼働を急ぐ東京電力に強く抵抗しているように、自治体は、重大事故の時には住民の健康と安全に全ての責任を負っています。いざと言う時に、国や都道府県よりもはるかに早く、避難か否かの決断を求められ、正確な情報が提供されていなくとも住民への指示と説明から逃れられないのが自治体の長です。住民の命を直接、預かるその首長の声に、国や電力会社は耳を傾けるべきだと思います。

「消えた「原発ゼロ」むしろ「重要電源」に」(「太陽のまちから」2013年12月17日)

 

 

 



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« 建築資材・職... 2013年総集編/... »