渋谷区が同性のカップルに「結婚相当証明書」を発行する条例案を3月議会に出すと発表し、新聞やテレビでも大きく取り上げられました。
世田谷区では昨年、「男女共同参画に関する区民意識・実態調査」を行いました。男女1500人、計3千人を対象に「性的マイノリティー(性的少数者)という言葉を知っていますか」とたずねたところ、全体の70%が「知っている」と回答しました。
私が注目したのは、「性的マイノリティーの方々の人権を守る啓発や施策について必要と思いますか?」という質問に対する答えでした。「必要」との回答は70%近くに達したのです(女性74.4%、男性63.3%)。「必要ない」は4.3%にとどまり、拒否感を持つ人は少ないという結果が出ました。
調査をするきっかけとなったのは、自身も性的マイノリティーの当事者である上川あや世田谷区議の問いかけでした。
上川区議は昨年9月、世田谷区議会で質問に立ち、アメリカ連邦最高裁が2013年に、それまで「結婚は男女に限る」としてきた結婚防衛法は法の下の平等を定めた憲法に違反する、としたことを紹介し、婚姻に性別を問わなかったり、準婚姻制度を持ったりする国が増えつつあると指摘しました。その上で、自治体の長として、どのように考えるのかを次のように問いかけました。
「区としてできることがあるはずです。欧米では、多くの自治体が独自に同性パートナーの登録認証制度を運営し、市内の病院、刑務所での面会権、学校に通う子の情報を同性カップルの両親で得る権利を認めるなど、さまざまな便宜を図っています。区でも第一歩として同性間パートナーシップの名義的な届け出を受け付けるなど、できる方策を検証、検討していただけないでしょうか」
質問を受け、私はまず、そうした海外の動向は必ず日本国内の制度の見直しにつながるだろうとの認識を示し、「同性間のパートナーシップをめぐり社会的に認知され、差別のない社会を実現していくことを目指したい」と述べました。
世田谷区では13年秋に策定した「世田谷区基本構想」の冒頭に、「個人の尊厳を尊重し、年齢、性別、国籍、障害の有無などにかかわらず、多様性を認め合い自分らしく暮らせる地域社会を築いていきます」と記しています。また、「世田谷区基本計画」では、「多様性の尊重」の項目に「女性や子ども、高齢者、障害者、外国人、性的マイノリティー等を理由に差別されることなく、多様性を認め合い、人権の理解を深めるため、人権意識の啓発や理解の促進をします」としています。
さらに、私は「同性間パートナーシップの名義的な届け出を受け付ける制度」について、こう答えました。
「基本構想、さらに具体的にセクシュアルマイノリティーの差別の解消ということをうたった基本計画の内容を具体的に実現するために、自治体としてどのような取り組みが必要なのかという観点から、所管部には国内外の自治体の取り組み事例などを調査、参照して、研究、検討するように指示し、対策を立てていきたいと考えております」(2014年9月18日)
このやりとりからまもなく着手したのが、男女3千人を対象にしたアンケートだったというわけです。そのなかには、「性的マイノリティー」に向けた設問も盛り込みました。「あなたは自分の性別に悩んだことがありますか」という問いに、女性の3.8%、男性の2.2%、全体で3.1%が「ある」と回答しています。
これまで、世田谷区では性的マイノリティーであるがゆえに悩んでいる人たちの相談窓口を設けたり、6年続けて「セクシャル・マイノリティ理解講座」を開催したりしてきました。また、性的マイノリティの理解を目的とした職員研修も重ねています。さらに、12年からは4年続けて、区内で開催される「LGBT(※)成人式」を後援し、私も来賓として参列してきました。
世田谷区としても近く、「同性パートナーシップを認める証明書」の発行について、その答えを示したいと思います。そして、性的マイノリティーの人たちの声を直接に聞きながら、実現可能な具体策を準備していきたいと考えています。
※「LGBT」とは、女性同性愛者(レズビアン)、男性同性愛者(ゲイ)、両性愛者(バイセクシュアル)、性転換者・異性装同性愛者など(トランスジェンダー)の英語の頭文字を連ねた、性的少数者の総称。