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 通常国会の開催前に、菅直人第2次改造内閣の顔ぶれが固まった。たちあがれ日本を離党した与謝野馨氏が経済財政担当大臣になり、仙谷官房長官が枝野幸男氏と交代し、馬淵国土交通大臣から大畠章宏経済産業大臣へと交代し、海江田万里経済財政担当大臣は経済産業大臣にスライドした。空席で仙谷官房長官が兼務していた法務大臣には江田五月前参議院議長が就任した。国家公安委員長には岡崎トミ子大臣から中野寛成氏に交代といったところが主なところだろうか、他の閣僚は続投する。与謝野氏を閣内に入れたことで起きた玉突き人事も含めると大幅改造とは言えない布陣となった。

 

 たちあがれ日本に離党届けを出した与謝野馨氏については、「民主党との政策の共通性」を強調されるが、ミスター自民党として総裁選挙にも立候補していて、小泉政権を含めて主要閣僚を歴任してきた。「政策通」と呼ばれるが、財務省と企業・財界に太いパイプがあるということであり、ついでに言うと法務省にも強い影響力を持った時期があった。ここで、与謝野氏の「変節」を批判するよりも、民主党がかつての自民党の政治と政策に接近していないかを問うべきだろう。

 

 予算審議の入口で「問責」を受けた閣僚を交代させた。本来なら予算編成した閣僚が、予算委員会で答弁に立つのが原則である。仙谷官房長官・馬淵国土交通大臣のふたりを更迭しなければ「審議拒否」というのが野党自民党の方針だっだが、「問責=更迭」の事実上の前例を作り上げたことで予算審議の入口に入ることが出来ただけだ。かつて、「審議拒否は国会議員の職務放棄」と罵ってきた自民党はホットしているに違いない。「審議拒否」をやらせて世論の批判を集め、日干しにするのが、かつての自民党国会対策の常道だった。

 

 平成23年度予算案は、衆議院の与党賛成多数で可決されれば成立するが、予算関連法案はそうはいかない。予算関連法案が参議院で通らなければ、予算の執行が出来なくなる。かといって、与党に無所属、社民党を加えて3分の2再議決を狙っているようにも、今は見えない。そうなると予算審議の出口で、一歩も進めない立ち往生となった時に、今後も民主・自民の「大連立」の影がチラつくことになる。

 

 こうなったら、議会制民主主義は死ぬ。小選挙区で「政権交代」を掲げて勝負に出て、長年の自民党政権を打倒してつくりあげたのが、1年半前の3党連立政権だった。自民党に投票しても、民主党に投票しても「大連立」という同じ政権で呉越同舟となるということには批判が高まり、時限を区切ることになるだろう。しかし、そこで「消費税増税」という民主党のマニフェストになかった政策を、元自民党の与謝野氏が司令塔になって推進するとなれば、政治不信は頂点に達する。

 

 民主党にとっての大連立はその場をしのげるように見えても、次の選挙で大打撃を受ける「禁断の実」なのだ。「普天間基地・県外移設」の失敗で、何もかもアメリカの言う通りに動くのが外交であり、安全保障だと考える人たちは、「集団的自衛権行使」を突破口に、衆参両院で憲法審査会を動かして「憲法改正」の日程を加速させることが必要だと考えている。朝鮮半島情勢の悪化、軍事衝突などの気配があれば、「挙国一致」がキーワードとなり、「大連立」が語られるようになる可能性がある。

 

 綱渡りをしようが、部分協力であろうが、民主党政権は絶対に「大連立」を回避してほしい。それは、既成政党に対して決定的な不信を生み、「偏狭なナショナリズム」を膨張させて政治を焼け野原にしてしまう危険があるからだ。「大連立」の手前の与野党超党協議で、「消費税」「比例定数削減」などに「スピード改憲」の環境整備に着手することをメディアが、財界応援団として煽り立てていく危険がある。

 

 社民党の役割は、大きすぎる与党が雪だるま式に膨張し、その結果、政治が焼け野原になる前に、ブレーキをかけることだった。ブレーキがすでに効かないほどに雪だるまに勢いがあれば、犠牲を覚悟で体当たりして雪だるまの中身を国民に見せることである。政権交代をともにたたかった仲間としての民主党に対しての提言も必要だと思う。

 

 オーストラリアで、ブラジルでいたましい洪水の被害が起きている。犠牲になった人たちにお悔やみを捧げたい。今、日本の政界に長年にわたってはりめぐらされていた堤防が決壊するかもしれない危機が迫っている。政権交代の原点にかえり、自民党政治を終わらせる政治をやろうという誓いを捨てさせないために何が有効なのかを考えていきたい。

 



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