今日、11時30分に北朝鮮による「飛翔体」の打ち上げがあり、日本列島の上空を通過していった。心配された落下物による被害などはなく、人工衛星だったのかどうかはまだ未確認だが、今後の舞台は国連安保理や六者協議という外交の場に移ることになる。もし、国内に落下をしてきたら議院運営委員会でも緊急に会議を開くことになっていたが、そうならなかったので明日の昼に会議がもたれることになった。たとえ人工衛星であったとしても、北東アジアの平和と安定を脅かす行為であり、厳重に抗議したいと思う。
「弾道ミサイル発射」とテレビ朝日のニュースは伝えた。人工衛星であったのであればロケットということになるが、「今のところ着弾していません」というアナウンサーに高野孟氏がクレームをつけていたが、「着弾」であれば狙いを日本列島に定めて撃ってきたということになる。政府・官邸が発表している方針でも、打ち上げられた「飛翔体」(ミサイルかロケット)が予定軌道を描いていた場合には、そのまま静観するとしていた。 地上100㎞~300㎞までカバーするSM3(海上配備型迎撃ミサイル)は低空度で飛ぶ短距離弾道ミサイルにしか対処出来ず、今回のように高高度の軌道を描くところまでは届かない。打ち上げ後に制御不能になって高度を下げて日本に近づいてくるような場合、あるいは切り離したロケットブースターが落下してくる場合に危険を避けるために「破壊」しようというものであった。
しかし、「迎撃」という言葉が一人歩きした。よく考えてみれば、これは緊急避難的な危険防止のための「破壊」であって、戦争時に使われる軍事的「迎撃」ではないはず。PAC3(地対空誘導弾パトリオットミサイル)は高度20㎞で弾道ミサイルを迎撃するもので、これが使われる確率は「極めて低い」はずだった。今回の事態で、MD(ミサイル防衛システム)をさらに充実させようという声が高まるかもしれないが、私はよく考えた方がいいと思う。すでに7000億円も投入しているMDをさらに充実するとすれば際限がない。すでに短距離弾道ミサイルが多数配備されているという情報から考えると、PAC3をドンドン増やしても、いたちごっこになるおそれもある。
すでに、国連安保理の開催が決まっているが、中国・ロシアが「人工衛星」だった場合には、強い制裁決議に同調する可能性は低い。北朝鮮核問題を解決するために、六者協議(中国・韓国・北朝鮮・ロシア・日本・アメリカ)が設けられたが、実質的な進展がない状態だ。粘り強く「核の脅威」を取り除くためには、この六者協議が再起動出来るような状況をつくることが必要不可欠だ。
2009年4月5日
北朝鮮によるロケット発射に抗議する(談話)
社会民主党幹事長
重野安正
1. 本日午前11時30分頃、北朝鮮は同国東北部の舞水端里にあるミサイル基地から、「試験通信衛星を運搬するロケット」を発射した。ロケットの1段目のブースターは切り離されて日本海に落下し、さらに2段目と3段目は日本の上空を通過した。今回、北朝鮮は宇宙条約に加盟して、国際機関に打ち上げを通報(3月12日)したが、形式的な通知の手続を行なったとしても、他国の領土と領海内に落下する可能性がありながら発射を実施したことは、まことに遺憾である。
2. 衛星打ち上げロケットと弾道ミサイルを区別することは難しく、北東アジア地域の平和と安全に悪影響をおよぼすことは明らかであり、六ヵ国協議の進展を阻害する要因となる。社民党は、北朝鮮政府が国際社会の声に真摯に耳を傾け発射を自制することを強く求め、3月31日に採択された国会決議にも賛成した。
3. 北朝鮮のロケット発射に対処するために、日本政府は、自衛隊法第82条2第3項に基づく破壊命令を発出して海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊を展開させた。また昨日は誤報を出すという失態を演じた。そのため、とりわけ飛行コース下にある自治体は誤った情報に振り回されるという結果になった。
さらに政府がこの機会に乗じて、ミサイル防衛体制の整備を進めようとすることは問題である。日本政府は、六ヵ国協議に加わっている中国やロシアを含めた国際的な協調体制を強化すべきである。
また北朝鮮は、六ヵ国協議で合意した核兵器開発計画の放棄を実施すべきである。核兵器開発とロケット開発の結合は北東アジアの緊張を高めるだけであり、宇宙空間の平和利用と国際協力を定めた宇宙条約の目的に沿った行動をとるべきである。
[以上、引用終わり]
明日から国会での議論が始まることになる。北朝鮮は「衛星打ち上げに成功、軌道に乗った」と発表し、一方でアメリカは「軌道に乗らず、先端部も着水した」と発表した。「人工衛星」が存在するか否かは、まもなく決着がつく問題だろうが、
今後の情報に注目したい。
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