事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ROMA/ローマ」 (2018 Netflix)

2019-04-11 | 洋画

ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、アカデミー賞監督賞・撮影賞・外国語映画賞を獲得。文句なく傑作。

アカデミー賞の作品賞は「グリーンブック」にゆずったが、あちらがあくまで娯楽作の範疇に踏みとどまったのに対して(それは立派なことだと思う)、この「ROMA/ローマ」は、まるで最初から名画になるように運命づけられていたかのよう。

モノクロの画面。バケツに水を入れる音がして、床にその水が流れてくる。そしてその水に上空を飛ぶ飛行機が映し出される……んもう最初から監督アルフォンソ・キュアロンのセンス爆発(今回は撮影も担当)。そしてその水とは、家の中で飼っている大型犬のフンを始末するためのものなのだ。

舞台は1970年代初頭のメキシコ。この国では先住民系の女性が家政婦になることが多いのだとか。だから雇い主と家政婦は人種的にも違っている。その格差が、ある事件(とも呼べないような小さなできごと)によって……ううう、泣ける。

この映画は、Netflixが製作したことで論議を呼んでいる。劇場公開を意図していない作品ははたして映画なのかと(だからカンヌ映画祭からは閉め出された)。そのあたりはわたしも微妙なところだと思う。

しかし、いまやエンタテインメント界の勝ち組であるNetflixという大旦那によって、優秀な作家があまり興行成績を気にせずに作品を世に発表できる時代になったことは確かだ。

そうでもなければ、モノクロで、演技経験のない女性を主役に抜擢し、長期間の撮影を行うなんてバカげたことが実現できたはずはない。芸術とは最初からパトロンを必要とするものだし、これもひとつの行き方ではないか。

アズカバンの囚人」「ゼロ・グラビティ」「トゥモロー・ワールド」(原作はP.D.ジェイムズ!)と傑作を連発してきたキュアロンは、ここでもうワンランク上の存在になった。

キチキチの通路に大型車を入れるシーンの連続、犬の鳴き声、何度も登場する飛行機、飛び交う異言語、そしてあの海のシーン(ここで初めてヒロインは本音を言う)。文句ありません。

ノンスターだしアクションもないし、ディスプレイでは安上がりに見えるかもしれない。でも画面の質感、セット(なんですって)のリアルさ……どんだけ手間がかかってるんだ!映画館で見て!

 

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