第2話「死者の身代金」はこちら。
今回の犯人はミステリ作家。といってもコンビの片割れで、実際に構想し、書いているのは被害者となる相棒の方。コンビを解消し、自分の書きたい題材に集中したいとするジム(マーティン・ミルナー)を、出版社との交渉やマスコミ対応しかしていないケン(ジャック・キャシディ)は、生命保険金目当てもあって射殺する。彼の用意したアリバイとは……
コンビでミステリを書いているとなればエラリー・クイーンが有名。しかし他にも岡嶋二人や「マルティン・ベック」シリーズのマイ・シューバル=ペール・ヴァールー夫妻など、けっこう数多い。
マルティン・ベックは夫婦で一章ごとに書き継ぐという気の遠くなるような作業だったらしいけれど、他のコンビはどうなんだろう。だいたい、コロンボ自体がウィリアム・リンクとリチャード・レヴィンソンというコンビの作品なのである。意味深。っていうか余裕か。
コロンボがケンの仕業だと確信するのは、第一の殺人と第二の殺人があまりにレベルが違いすぎるから。第二の犯罪は、アリバイトリックをくつがえしてしまいかねない目撃者を撲殺し、湖に投げ捨てるという「陽の当たる場所」そのまんまの無計画さだったのだ。つまり、最初の犯罪は有能な犯人が立案したものだが、次の犯罪は無能な(つまりミステリ作家としてはお粗末な)犯人によるものではないか、と。
しかしラストでケンが自白するのは、コロンボの追及とは別の理由からだった。このオチはなかなか。
原題も邦題もシャレになっていて、邦題は森村誠一の「高層の死角」をもじったものだろうし、原題は直訳すれば「決まりきった殺人」だけど、文字通り本をめぐる殺人でもあった。そのうえ、事件解決の決定的な証拠が“ブック”マッチときた……
第二の被害者にケンがプレゼントする作品名が「殺人処方箋」だったりするお遊びや、暗闇からぬっとあらわれるコロンボの姿が、ケンにとって不吉なものであることをカメラが訴えたり、この作品を監督したスティーブン・スピルバーグという新人は将来有望だと思います。
第4話「指輪の爪あと」につづく。
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