作品の中に作品が仕込んである、という趣向は珍しいものではない。でも、その作中作が現実(という名のもうひとつの作品)とどうからむか、という点においてものすごく考えてある。昨年末のミステリランキングトップを独占しただけのことはある。
仕掛けが周到であることだけでこれだけの評価はなかなか。それ以上に作中作のクリスティっぷりがすばらしくて、まもなく命が燃え尽きようとしている名探偵が、ポワロの個性をもうひとひねりしてあるあたりもうれしい。
ミステリの中でなら容疑者は限定できる。でも現実はそうはいかない……というもう一人の名探偵の嘆きを挿入するあたり、うまいなあつくづく。
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