PART1「紅葉、八雲」はこちら。
◇若山牧水
「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒は静かに飲むべかりけり」
この歌は牧水が26歳のときのもの。このとき牧水はアル中で療養中の身だった。
死ぬ三年前の九州めぐりの旅では
「51日の間、殆ど高低なく飲み続け、朝、三四合、昼、四五合、夜、一升以上というところであった。而してこの間、揮毫をしながら大きな器で傾けつつあるのである。また、別に宴会なるものがあった。一日平均二升五合に見積もり、この旅の間に一人して約一石三斗を飲んで来た」
一日平均二升五合ですよ。つまり一日あたり4.5リットル!きいてますか奥さん!芋焼酎 3合のわたしなどまだまだ及びも……及んでどうする。
腐臭がしそうなくらいの酒量。教科書にまで載った「白玉の~」が別の色彩をおびてくる。このくらいまでくれば立派なアル中だよね。わたくしなどまだまだです。ほんとです。
◇鈴木三重吉
葬式の客がほとんど帰ってしまったあと、八字髭の大男があらわれた。男は霊前に額ずいて静かに焼香し、縁側に坐って仏間をみつめていたが、突如大声をワアッと張りあげて、爆発するように泣いた。涙は八字髭を伝ってポタポタと畳に落ち続けた。内田百閒であった。
……鈴木三重吉は「赤い鳥」の主宰者。漱石門下の結束は強く、しかも有能な弟子を次々に輩出した。師匠の人徳というものだろうか。わたしは内田百閒のファンで、彼のとぼけた貧乏ぶりこそが文学者というものだと思う。かつて旺文社文庫から出ていた彼の作品群は、いまはどこから刊行されているのだろうか。
次回は「啄木、安吾」篇。
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