三年後に切腹することが決まっている男。彼は藩主の側室と不義をはたらいたことで切腹を命じられたが、十年間の猶予のあいだに藩史を編纂するという名目で幽閉されている。
同じように、城内で友人と斬り合いとなり、本来であればこちらも切腹するところを、幽閉された人物の家譜の清書を手伝うという名目で、しかし実態は監視を命じられる若者がいる。
つまり微妙な立場のふたりの侍が、どのように三年間を過ごすのかというお話。原作は葉室麟の直木賞受賞作。ネット上でも泣けると評判。さーてわたしも読んでみよう…………どうにも納得できない。
武士道という名のやせ我慢の物語。身を捨てて藩を救おうとするストーリーは、山本周五郎の「樅の木は残った」の系譜か。わたし好みのはずなのに、むしろやせ我慢を捨て去った息子の行動がなければ無駄死にではなかったか。もっと頭を使っていれば、あの子どもの悲劇はなかったのでは……いろいろと考えてしまいました。
映画にも、同じような違和感が。
こんなシーンがある。妻(原田美枝子)と娘(堀北真希)が、幽閉の原因となった不義密通のことを語り合う。「お父様はそのようなことをなさる方ではありません」と妻は静かに諭し、娘は納得する。それはいいんだけど、それをふたりの男(役所広司&岡田准一)に聞こえるような声でやりとりしているのだ。演出に、どうも配慮が足りない気がします。
もちろん役所広司はうまいし(いくらなんでもスーパーマンすぎるとも)、岡田准一の居合いはお見事だ。原田美枝子、寺島しのぶ、川上麻衣子という、美しいヌードをかつて披露してくれた美女たちが競演しているのもうれしい。
でも、常にどこかしら画面がぎこちないのは「雨あがる」と似た印象。黒澤明直系の小泉監督は、クロサワの教条的な部分まで受け継いでしまったのかなと……
ひとつ確実なのは、とにかく串田和美に時代劇は似合わないなあ。
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