事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「樅ノ木は残った」 山本周五郎著 新潮文庫

2012-03-29 | 本と雑誌

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YouTube: 大河ドラマ 樅の木は残った

伊達騒動、のお話。といってもわたしは日本史の素養がないのでさっぱりわからない。

この事件をモデルにしたのがかの有名な「伽羅先代萩」。かの有名な、といってもわたしは歌舞伎の素養もないのでさっぱり。

ということでネットからアウトラインをひっぱると……

だて‐そうどう 〔‐サウドウ〕 【伊達騒動】 
江戸初期、仙台藩伊達家に起こったお家騒動。万治3年(1660)藩主伊達綱宗は不行跡のかどで幕府から隠居を命ぜられ、幼少の綱村が家督を相続。その後見役伊達兵部宗勝が家老原田甲斐宗輔らと宗家横領を企てたとして、伊達安芸宗重が幕府に訴えた。寛文11年(1671)大老酒井忠清邸での評定の席で宗重は宗輔に斬られ、宗輔も殺害された。「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」など、歌舞伎・浄瑠璃の題材となった。
【デジタル大辞泉】

山本周五郎の「樅ノ木は残った」は、この宗家横領未遂犯にして先代萩では仁木弾正という大悪役をふられた原田甲斐が主人公。

山本はこう解釈したようだ。

酒井大老邸では関係者のほとんどが斬殺されたため、事件の真相はいまひとつ判然としない。しかし、徳川幕府がありとあらゆる難癖を各藩につけてお家お取り潰しに熱心だった時代に、仙台藩は存続し得たではないか。それは、すべての悪行を原田甲斐ひとりがひっかぶったためではないのか?と。

小説「樅ノ木は残った」は、意外なほど企業小説、スパイ小説の色彩が濃い。各章の合間に、伊達兵部を中心にした密談が挿入され、これがなかなか悪辣であり、同時に周到。しかし、原田甲斐がなかなか腹の内を見せないことにいら立つあたりも憎い展開だ。

NHKの大河ドラマでは(市川雷蔵が予定されていたらしいが)平幹二朗が原田甲斐、伊達兵部に佐藤慶。どっちも悪役ヅラじゃないですか(笑)。真の悪役である酒井雅楽頭に北大路欣也なのだから何が何だか。

もしも山本周五郎の立てた仮説が正しいとするなら、原田甲斐は自らの一族郎党を犠牲にして藩を守ったことになる。高度成長期のサラリーマンらしく、滅私奉公が賞賛される世の中だから受け入れられたのではないか……とするのは浅薄な意見だと思う。いくら日経に連載されたのだとしても。

山本の企みは、そんな理不尽なありようを納得させる人間像が描ききれるかだったのだろう。原田がほとばしる本音を見せるのは、命を賭けた鹿狩りのときだけ。そして、年の離れた宇乃という女性(ドラマでは吉永小百合)に対してだけだ。そのストイックさは、平成の世でもいまだに魅力的だった。

それにね、山本周五郎の小説って意外に前衛的。延々とひっぱったドラマの最終章は、残った樅ノ木を見つめる宇乃が、女として濡れるというとんでもない結末なのである。びっくりー。

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