神田を歩いているときだった。けっこうなビルに、おなじみの社名が。
「そっかー。ここが白泉社なんだ」
「ガラスの仮面」や「パタリロ!」で建ったビルなんだろうな。しかしわたしはさほどの感興も感じなかった。少女漫画にまで手を出していたら時間がいくらあっても足りないくらいはわかってる。
ということで、羽海野チカのことは、ハチミツとクローバーの作者くらいの認識。この原作もまったく読んだことはなかった。映画もスルー。でもレンタルDVD屋でめぼしい作品はほぼ借りてしまっているので、食わず嫌いはいかんと借りてみた。
のっけから暗い。交通事故で家族みんなを失った少年。そこへ、亡き父の友人であるプロ棋士である幸田(豊川悦司)が現れ、その少年に
「将棋は、好きか」とたずねる。少年はうなずく。
高校生になったその少年、桐山零(神木隆之介)はしかし、ある事情で幸田の家を出て一人暮らしを始める。彼は中学時代にすでにプロ棋士になっていた……
暗いオープニングに、前後編合わせて5時間もつきあえるのかと不安に。ところが、話が将棋そのものに入りこむといきなり面白くなる。
同僚に「3月のライオン、って読んだ?」と訊いたら
「まだ連載は続いてるはず」
おお、さすが大ヒット漫画だけに多くの人が読んでいる。そして、そのキャラクターにこの映画の登場人物はかなり“寄せて”あるのだそうだ。
佐々木蔵之介は羽海野のイメージキャストだから当然としても、中村倫也、加瀬亮、有村架純なども……あれ?「聖の青春」の村山聖をモデルにしたとおぼしいこのおでぶちゃんは誰…………ええええ、あの人だったのか。徹底してるなあ。
見終わって大満足。やっぱり、食わず嫌いはいけませんね。