事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ロッキング・オン天国」 増井修著 イースト・プレス

2018-01-03 | 本と雑誌

かつてrockin’ onを特集したときにお伝えしたように、わたしはロッキング・オン文体(勝手に名付けました)に激しく影響された。

おそらくわたし(1960年生まれ)は、あの雑誌に“最初の洗礼”を受けた世代だ。

70年代に、渋谷陽一、松村雄策、橘川幸夫、岩谷宏という、わたしにとってのスターたちが始めた同人誌は、特に渋谷陽一の“なあなあの音楽ジャーナリズムに切り込み、同時に商売として成立させる”という意気込みもあって着々と売り上げを伸ばしていった。リヤカーを引いて書店回りをしたというのは、あながちギャグではなかったのかも。

渋谷陽一につづく、2代目編集長となったのが、新潟出身で新潟大を中退して入社した増井修。上京するにあたっては家族親戚から壮絶に反対されたとか。そりゃそうだろう。いまでこそメジャーな出版社だが、当時は零細もいいところだったのだし。

増井は、これまでの批評がロックと呼応する以上に書き手のエゴが優先する、ロッキング・オン文体を否定する(笑)方針で突っ走った。なにしろ当初は、山形から来た女性高校教師の読者が編集部内で自殺を図ったほどのカリスマ雑誌。さすがの渋谷陽一も頭をかかえたとか。知らなかったなあこの事件。

そんな増井が渋谷と衝突し、解雇をめぐって裁判にまでなった事情はよくわからない。この書では、むしろ冷静にロッキング・オン社時代を語っていて、編集者8人で3億の売り上げがあったなど、穏やかな回顧録になっている。

といっても増井はわたしと同い年。まだ回顧に走る年齢ではないのだが。

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