事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「Destiny 鎌倉ものがたり」(2017 東宝=日テレ)

2018-01-02 | 邦画

かなり危うい均衡の上に立った作品だと思う。亡くなってしまった年の離れた若妻を、黄泉の国から連れ帰るお話。死と性はとても近い存在なので、艶めかしい女優と脂ぎった俳優でやられたら目も当てられない。

その点、この映画のキャスティングは満点。

堺雅人高畑充希という、セックスの香りがまったくしないふたりを主役にすえ、夫婦愛を歌い上げながら新婚のくせにキスもしないのだ。正解だと思います。

設定も考えてある。鎌倉、というジェノサイドのあった土地の妖気を利用し、魔物と人間の共存が無理のない場所を江ノ電が走り、その江ノ電の旧型が黄泉の国へ死者を運ぶ。しかも現代のクルマをまったく登場させず、旧車のオンパレードで時代の空気を消している。堺雅人は作家だけど、いまどきあんな文人スタイルの作家がいるものか(笑)。

でも文句もあるの。

前半のエピソードがとにかく冗長で、つなぎが0.5秒ずつぐらい長いのは「三丁目の夕日」と同様。ベタな盛り上げ方で涙をしぼるのはいいにしても、もうちょっとスマートにできなかったんですか山崎貴監督。

「ジュブナイル」以降、「STAND BY MEドラえもん」まで、そのほとんどを見ている(百田尚樹原作作品はかんべんして)ファンだからこそ、ちょっと言わせてもらいました。

その冗長な前半の伏線を刈り取る、黄泉の国へ向かってからの後半は見違えるよう。「千と千尋の神隠し」の湯屋のような黄泉の光景には、日本人の死生観が反映されている。カオナシが出てこないのが不思議なくらい。

親切な死神の安藤サクラ(彼女だけ「マジすか」とか現代っぽいのが笑える)と、情け深い貧乏神の田中泯がもうけ役。

でもこの映画はやはり堺雅人のものだ。所作もふくめてほんとうに美しいの。娘は

「堺雅人だけ見てても満足。もう一回見るわ」

と意欲満々。お正月にオトナの観客を集めているようなので、興行収入も当初の見込みよりも上回るだろう。続編期待。あ、それからエンドタイトルが始まっても絶対に席を立たないこと。あの茶碗がっ!

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 風雲児たち 蘭学革命篇 | トップ | 「ロッキング・オン天国」 ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (たかし)
2018-01-03 08:21:45
>この映画はやはり堺雅人のものだ。所作もふくめてほんとうに美しいの。

所作がねえ、海街ダイアリーみたいですね。

>「堺雅人だけ見てても満足。もう一回見るわ」

そんなに、見ますわ。
返信する
前半が退屈なのは…… (山形支社長)
2018-01-03 08:43:38
覚悟してくださいね。
それにしても山崎監督はお茶碗が
好きなんだなあと。
三丁目の夕日ではおむすびをつくってましたし。
返信する

コメントを投稿

邦画」カテゴリの最新記事