事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「墨攻」(ぼっこう)~‘06 中・日・香港・韓~

2008-06-12 | 洋画

061016194042 戦国時代。趙と燕の国境にある粱城は、趙によって攻撃されようとしていた。10万の趙軍に対し、梁城の全住民はわずか4000人。頼みの綱は墨家の救援部隊だったが、間に合いそうもなく、粱王は降伏を決断する。墨家の革離(かくり)がたった1人で駆けつけたのはその直後だった。兵に関する全権を粱王から与えられ、早速城を守る準備に取りかかる革離。趙軍の指揮官・巷淹中は革離を好敵手と見なし、やがて激しい攻撃を開始する。

戦乱の世で「非攻」を掲げ、しかし弱者を守るためには戦闘のプロとなった思想集団・墨家。彼らは儒家と並ぶ勢力を誇ったが、秦の時代に忽然と消滅。その後2000年の間に、史料がほとんど失われてしまった墨家は、今では一切が謎に包まれた存在だ。そんな彼らを題材にした小説とコミック「墨攻」。日本で生まれたこの作品は、海外でも熱烈なファンを獲得。その1人だった監督の熱意により、日本、韓国、香港、中国の3カ国4地域が手を結んだビッグ・プロジェクトとして、映画化が実現。優れた分析能力と的確な判断力を持つ革離役に香港の大スターアンディ・ラウ、敵将の巷淹中役に韓国の国民的俳優アン・ソンギと、各国から豪華キャストが集結。
~goo映画より~

 見終わってちょっととまどう。酒見賢一の原作と微妙に肌合いが違っているなあと思ったので。てゆーか違いすぎ。ストーリーは上で紹介したとおりだけれど、言ってみれば理不尽なお話なのである。

 酒見の場合はそんな理不尽も「うーん、まあ、それも仕方ないかな」ととぼけてみせるのが常だが(中国の古代史なんかそんなスタンスでなければ納得できないでしょうや)、しかし映画は違う。歴史上初の博愛主義“兼愛”と“非攻”を掲げて突っ走る墨家のなかでも、原理原則ガチガチの主人公革離が粱の民をオルグし、兵站を整備、武器を改良し、城を守る。専守防衛が基本ながら、もっとも効率的な守備が“できるだけ敵を殺すこと”と片側では実利的な戦法をとる。このあたりの矛盾が面白いのだが、しかし映画のなかの革離はそのことで激しく悩んでしまうのだ。「あなたは正解だけを求めたがる」とヒロイン(けっこうかわいい)に諭される革離の苦悩をどう評価するかがこの映画のキーだと思う。

 にしても、中国語をまったく話せないアン・ソンギを起用したり、例によって人民解放軍が大挙して動員されていたりする大作映画の原作が日本のコミックであるあたり、現代。

※原作の、南伸坊のイラストは最高だった。あれを味わうだけでも読む価値はある。

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